訪問先:二本松・浪江連携復興支援センター
訪問日:2014年6月6日
取材者:鈴木亮
お世話になっています。福島担当・鈴木亮です。
東北の復興に取り組んでいる活動団体の動向を紹介する「レポート」コーナー、福島県の第二弾では、二本松市に2013夏にオープンした「二本松・浪江連携復興支援センター」を紹介します。センター代表代行で、まちづくりNPO新町なみえ理事長の神長倉豊隆さんにお話を伺いました。
―― Q.取り組んでいる地域課題は?
地震・津波・原発事故の被害が大きく、避難区域が全域的に及んだ6町(双葉、大熊、富岡、浪江、楢葉、広野)の中でも浪江町は避難指示解除準備区域が40.5%、居住制限区域が42.3%と町が二分されている。また役場・社協の避難先が二本松市と、比較的事故を起こした原発に近く、避難住民がまとまりづらい状況がある。2014年6月時点での避難状況は、人口21,074人のうち、県内避難14,692人、県外避難6,382人である。県外避難は国外も含めほぼ全国に広がり、県内避難も福島市3,522人、いわき市2,603人、二本松市2,342人、郡山市1,712人、南相馬市1,219人、その他さまざまな地域に分散している。
このような状況の中、まちづくりNPO新町なみえは二本松市を拠点に、早稲田大学都市・地域研究所 佐藤 滋研究室の協力を得て、20~30年の長期にわたる2地域居住のコミュニティづくりとして、浪江町民の絆維持と、避難受入自治体である二本松市民との絆創造に取り組んでいる。2013年夏にはNPO法人・まちづくり二本松の協力の元「二本松・浪江連携復興支援センター」を設立した。
二本松市は平成の旧二本松市、安達町、岩代町、東和町が合併した人口56,485人の歴史ある城下町である。東和地区では農業者によるNPO活動が盛んで、放射能対策の先進地域となっている。市街地である旧二本松市地域は二本松駅前にNPO法人まちづくり二本松が指定管理者である二本松市市民交流センターがあり、復興の集いが頻繁に開催されているが、二本松市民側として浪江町民との交流の動きは活発とは言えない現状がある。
―― Q.どのような取り組みをされているのですか?
まちづくりNPO新町なみえとして、早稲田大学やふくしま連携復興センターと協力し、復興まちづくりワークショップ/シンポジウムを継続的に実施している。民間版まちづくり計画「浪江宣言」を11年7月と13年3月に発表。2014年3月11日は東京の支援団体「浪江きてほしいTシャツプロジェクト」と連携して、Tシャツコンテスト表彰式を開催し、寄付型オンデマンド販売を開始した。2014年度は各地の浪江自治会のサポート、郷土行事の開催、二本松市の町外コミュニティ/商店街活性化など、多岐に渡る活動を予定している。
―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?
まちづくりNPO新町なみえとして、5名ほど(無報酬)。二本松・浪江連携復興支援センターのスタッフが数名。
―― Q.困っていることはありますか?
そもそも「コミュニティ」の概念に関する住民の発言・議論の機会が少ない。単に住宅や商店街があるかないかではなく、学校があり、住民の支え合いがあり、個々のコミュニティだけでなく、村全体の将来を語り合える仕組みが重要だが、住民が話し合い、役場と対話する事がまだまだできていない。
2地域居住に対して行政制度が追い付いていない。住民票を移さないと越えられない壁があるが、移せない/移したら戻せないという問題がある。
―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?
<浪江、二本松両方の実力あるキーパーソンの参加促進>
現在は商工会の人脈が強いのが強み。自治会、農業者、社協、NPOなど地元の多様なキーパーソンの参加を促進するための機会、支援を必要としている。
<浪江きてほしいTシャツプロジェクトへの支援・協働>
浪江町のこどもや全国から募ったデザインで、ふるさと・浪江に帰れる日まで支える活動として2013年始まった支援プロジェクト。毎年夏にデザイン募集をして、3月11日に表彰式をします。Tシャツはオンデマンドで購入可能。復興イベントや日常でのメッセージPRとして活躍していただけます。
<事業協賛・助成>
二本松・浪江連携復興支援センターとして人件費は確保できていますが、事業費が確保できていません。ニュースレターの発行、絆イベント、組織基盤強化研修事業など、長期的な視野で活動を持続的にしていくための支援を必要としています。
<了>
【関連情報】
(URL)二本松・浪江連携復興支援センター http://nnrenkei.world.coocan.jp/profile.html
(URL)NPO法人 新町なみえ http://sinmachinamie.com/
【問い合わせ先】
この記事への問い合わせは、JCNまで。お問合せ
訪問先:NPO法人夢ネット大船渡
訪問日:2014年6月18日
取材者:中野圭
こんにちは、岩手の中野です!
今回は大船渡市をはじめ岩手県気仙地域でさまざまな復興支援活動を展開する夢ネット大船渡の岩城理事長にお話をお伺いしました。
―― Q.取り組んでいる地域課題は?
時間の流れとともに、住まいの移り変わりが始まっている。応急仮設住宅はこれまでの支援活動を通して大体どこに誰が入居しているかが把握され、どのように支援をしていけばいいか考えることができた。今後災害公営住宅に移転した際には誰がどこに入っているかまたわからなくなってしまう。先日当法人の総会の中でも呼びかけたが、ぜひ会員経由で災害公営住宅の入居者の知り合いをつないでもらい、効果的な支援につなげたいと思う。
また災害公営住宅の中での世話役となる自治会長のような存在をいかに作るか。大船渡でも災害公営住宅には集会所が設けられコミュニティの形成に役立つものになるはずだが誰が鍵の管理をしたり、取りまとめたりしていくのか。高齢者も非常に多い中で課題になると感じている。
夢ネット大船渡としても主に地域の会員等をたよりにしてサロンなどを企画していきたい。マンパワーも限られるので災害公営住宅全てには無理だが、何箇所かを支援モデル地区のようなかたちで設定し重点的に支援しながら他の災害公営住宅へも輪を広げていきたい。
―― Q.どのような取り組みをされているのですか?
気仙地域の復興の様子を伝える「復興ニュース」を配布しながら、会員や知り合いを通じて見守りをしていく。個人情報の壁もあり、災害公営住宅に移行した際にはどこに誰が入っているかはわからないということが起きるので、まずは把握するということが必要になる。また、災害公営住宅でのサロン活動も行いたい。その中で入居者の世話役的な存在が欠かせないが、行政が段取りをしてやらなければならないし、場合によっては積極的に連携もしなければならない。市内でも都市部の災害公営住宅は様々な地域からの入居が予想されるので特に重要。そうしたところをモデル的に支援したいと思う。
しかしながら、行政に頼るだけでもいけない。住民自身が見守り、住民自身が課題意識を持ってコミュニティ形成を担っていく環境づくりが一番大事になる。
―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?
会員は地域内に23人、地域外が10人ほど。三陸鉄道のふれあい待合室なども含め9人が雇用、非常勤で3人、いわて復興応援隊が2人。課題の全てに取り組むことはおそらく難しいので、何に取り組むべきかしっかり考えながら臨みたい。
―― Q.困っていることはありますか?
大船渡は外部からの観光などに対する受け入れ体制が一本化されておらず、逆にわかりにくい。経済の復興、雇用の創出、交流人口の拡大がこれからの地域課題になる中で、その整備が必要になる。
仮設住宅の集約も簡単ではない。さまざまな状況の人が住んでいる中で集約を急ぐのは難しい。仮設に残ってくるのは経済的にも精神的にも厳しい人が多いようだ。その人たちに移転を求めていくことは丁寧な説明と調整が必要になる。
―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?
災害公営住宅でのイベントをおこなっていきたいので、手品、歌、おどり、手芸など何か人が集まって行えるものを提供できる方と連携していきたい。
岩手県でも人口流出対策が叫ばれている。人口はどんどん減っていく。現在の規模でまちを作っていっても、人がいなくなる。災害公営住宅でも人がすまなくなる。これからも被災地に足を運び人口の流動を促したい。ただ、外からくる方々を現地でコーディネートするためにも資金が必要となる。しっかり経済を回しながら人を呼び込む体制づくりにもご協力いただきたい。
<了>
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訪問先:NPO法人陸前たがだ八起プロジェクト
訪問日:2014年6月13日
取材者:中野圭
こんにちは、岩手の中野です!
今回は陸前高田市モビリア仮設住宅の支援に取り組むNPO法人陸前たがだ八起プロジェクトの蒲生さんにお話をお伺いしました。
―― Q.取り組んでいる地域課題は?
震災当時、陸前高田市のモビリアというキャンプ場の支配人をしていた。震災後多くの避難者がモビリアに押し寄せてきたので、そのまま避難所として開設した。その後、避難所が解散し、そのまま仮設住宅ができた際に外部支援者から「これからだよ」という言葉がかけられた。過去の震災事例では孤独死、やりがいづくり、いきがいづくりという課題がいかに大きかったかをその時に学んだ。現在はモビリア仮設住宅団地に常駐しながらの支援を行っている。コミュニティの形成を目的とした自立支援サポートが大きな活動となっている。
今年の終わり頃から仮設を出ていく人が増えるだろうと感じている。モビリアは市内でも最後まで残る仮設団地のひとつと予想されており、今後入退去が増えるのでその点もしっかり意識しておきたい。
―― Q.どのような取り組みをされているのですか?
全般的に言えばサポートセンターの役割を果たしている。住民の相談窓口、自治会サポート、団地へのイベント受け入れ調整、現在は少ないが物資配布など。特に自立を促すためのイベントのサポートや、コミュニティ形成も兼ねる畑作業、高齢者の自主的なお茶会、手芸サークル、麻雀サークル、男の料理教室など。
今後は仮設間、地域間、在宅と仮設の溝など、いまだに埋まっていないさまざまな「溝」をつなぎ、フォローしていくことがどうしても必要になってくるので、モビリアだけの支援というわけにはいかないと感じている。その溝を埋める作業が広い意味で本質的なまちづくりにつながると感じている。
―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?
常勤で4名のスタッフ、理事が代表含め5名、監事1名。中越防災安全推進機構やNICCOといった外部からの応援者に支えられた部分も大きい。
―― Q.困っていることはありますか?
地域として、復興の全体感としては落ち着いてきたと思うが、NPO/市民活動セクターの活動がまだ求められている中にあって、その活動環境はまだ整っているとは言えず、不安定な部分がある。自分たちの組織もそうだし、地域としても、この陸前高田でしっかりとした立ち位置を作り出していかなければならない。
―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?
復興というのは被災地沿岸多様だが、まだ復興支援は必要だと感じている。その中で今後一番危惧しているのは人口流出。震災以前から進行していたこの課題は、震災を経て一気に進んでいる。もちろん被災地だけの課題ではないし、簡単な解決策があるわけでもないので、全国の皆さんのお知恵やお力をぜひ貸してほしいと感じている。
<了>
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事務局の岡坂です。
先週からこのブログで突然「レポート」なるものが始まりました。
あまりに突然過ぎて正直僕も驚きましたので、少し内部事情を暴露しつつ、このレポートがなぜこのタイミングで出てきたのかちょっと解説します。
1.起案者は事務局員「I」くん
このレポートは実は「あるもの」のために作っています。Walk with 東北のようなキャンペーンと違うものですが、カタチになる「あるもの」のために、その材料としてしたためています。一連の計画を起案したのは宮城の担当の事務局員Iくんです。手前味噌かもしれませんが、このIくん、宮城県内の復興に取り組んでいる団体のことなら多分一番知っている人です。「最近どう?何か〇〇みたいな活動している〇〇な団体知らない?」と聞くと直ぐ出てきます。そしてその団体のことをよく知っているので詳細に語ります(決しておしゃべりな男じゃないけど)。
2.実は黙々とやっていることが仇に
真面目な活動者はあまり多くを語らないものです。そして件のIくんも例外ではありません。さらに岩手担当、大船渡出身のNくんも、福島担当の環境活動一筋のS殿もその例外ではありません。そう、彼らは毎日グルグルといろんな団体を回って、レポートに書かれているような話のもっと長くて濃いのを、がっちり聴いているのです。でもそんなことJCNの事務局より外の人は知らない。まさかあの現地会議のテーマ設定がそんな血と汗と...でできているなんて多分知らない。
3.「最近どう?」=「最近(東北の復興に取り組んでいる活動団体の動向)どう?」と同じ?
そしてその数は、なんと昨年度1年間だけでも、のべ574団体になったのです。名寄せすると249団体になります。そんな彼らに「最近どう?」と聞くことは「最近(東北の復興に取り組んでいる活動団体の動向)どう?」と聞いてしまうことを意味します。彼らと雑談するときは気をつけましょう。もれなく1時間ほどが東北の復興を知るものすごい有意義な時間になります。...というわけで起案者のIくんはそれをいろんな人に伝えるべく、あるものをカタチにして作ることを心に決めます。それが何かはまだヒミツです。
(結局、言い訳にもお知らせにもなっていないような気もしますが)では、そんな彼らの腐心の成果を温かい目でもう少しおまちください。
文責/岡坂 建
訪問先:芦の口復興公営住宅支援者連絡会
訪問日:2014年5月28日
取材者:池座剛
先日「芦の口復興公営住宅支援者連絡会」(仙台市太白区)に参加させて頂き、参加メンバーに活動の経緯や悩みなどについてお聴きしました。
―― Q.取り組んでいる地域課題は?
芦の口の復興公営住宅は民間企業の旧社宅をリフォームしてつくった集合住宅です。今年の4月から移転してくる人たちは、長い避難生活を送った後にやっとの思いで恒久的に住める環境に移るわけですが、不慣れな場所で当然、地域のことや住民のことも分からず不安な思いで生活を始めなければなりません。そこで、これから一緒に暮らしていく地域住民として、復興公営住宅に移転してくる人たちと周辺住民が共に気持ちよく地域で暮らしていけるよう、受け入れ支援をしようと連絡会を立ち上げました。
―― Q.どのような取り組みをされているのですか?
芦の口地区では、地域住民と地区社協が中心となり、まずは移転してくる人たちにどの様な支援が必要かを話し合うために入居予定日の約半年前の2013年9月に「芦の口復興公営住宅支援者連絡会(連絡会)」を発足しました。話し合いの結果、計画を実効あるものにするため10名ほどの作業部会を設けしました。そして、移転してくる人たちが慣れない土地で少しでもスムーズに地域生活を営むことができるよう地域マップをつくろうという話になり「ウェルカムマップ※1」と名付け完成させました。また、移転してくる人たちに地図を渡すだけでなく、それをきっかけに顔の見える関係づくりをしようと引越日のお茶のおもてなし(お茶っこ)の実施や、入居者の戸別訪問、地域住民と移転住民との交流の場をつくるための「顔合わせ会」を開催しました。
―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?
連絡会は、芦の口地区の町内会、民生委員、地域包括支援センター、地区社協、太白区社協、区役所など、住民組織や行政、関係機関よって構成されています。
最初のきっかけをつくったのは実は、当時の太白区社協の熱き担当者の方だったのですが、その後も立場の異なる人たちがなぜここまで真剣に、信頼感を持ちあって受け入れ支援について議論し続けるのかというと、一番大きかったのは連絡会発足時の「合同研修会」の実施だと思います。
2013年10月にいち早く復興住宅への入居がはじまった美里町牛飼地区の取り組みを学ぼうと、美里町の関係者を招き芦の口の関係者と合同で研修会を行いました。それ以降、皆の課題意識や思いが一つになった気がします。
―― Q.困っていることはありますか?
あります。いつまで支援をすることが良いか、特別な扱いをすることで逆に地域に自然に溶け込めなくなるのではないか、活動を続けていく中で町内会に負担が重くなっていくのではないか、どこから活動資金を調達してくるかなどでしょうか。今後の取り組みについては、連絡会の皆で悩み、話し合いながら考えていきたいと思っています。※2
―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?
自分達の様な活動が他の地域に広がって何らかの形で役立つことは嬉しいことです。しかし、注目が集まり問い合わせや研修講師依頼、視察訪問などが増え過ぎると住民に負担が大きくなってしまいますので、その点はご配慮いただけると助かります。
<了>
【注釈・追記】
※1 ウェルカムマップとは、地域福祉関係者は地域資源マップと呼ぶもので、地域の公共施設や交通機関・病院・商店などが分かりやすく描かれた地図と裏側は町内会を含めたコミュニティ拠点の住所・担当者名・連絡先など活きた生活情報を掲載。町内会長さんを中心に作成されたそうです。
※2 移転される人たちが地域の町内会に入らず、復興住宅独自の自治会をつくった場合に、町内会としてどういった立場で支援ができるか、という不安もありましたが、移転者のほとんどが町内会に入ってくれたのでこの悩みは解消されました。
【関連情報】
「芦の口復興公営住宅」は比較的小規模の復興住宅で、2014年4月に12世帯の被災住民の入居が開始されました。地域住民が主体的に復興公営住宅の入居者支援に取り組むのは市内で先駆的なケースだそうです。
この様な取り組みがうまれた背景には上述通り、仕組みや制度というよりもそれらを活かした「人」の存在が大きいと感じました。町内会の皆さんや民生委員さん、太白区社協や地域包括支援センターの担当者など情熱と思いを持った地域住民の一人ひとりの行動が今回の様な取り組みを生んだのだと思います。
【問い合わせ先】
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