東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

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【レポート】移りゆくコミュニティ、如何につなぐか

訪問先:NPO法人夢ネット大船渡
訪問日:2014年6月18日
取材者:中野圭

こんにちは、岩手の中野です!
今回は大船渡市をはじめ岩手県気仙地域でさまざまな復興支援活動を展開する夢ネット大船渡の岩城理事長にお話をお伺いしました。

―― Q.取り組んでいる地域課題は?

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時間の流れとともに、住まいの移り変わりが始まっている。応急仮設住宅はこれまでの支援活動を通して大体どこに誰が入居しているかが把握され、どのように支援をしていけばいいか考えることができた。今後災害公営住宅に移転した際には誰がどこに入っているかまたわからなくなってしまう。先日当法人の総会の中でも呼びかけたが、ぜひ会員経由で災害公営住宅の入居者の知り合いをつないでもらい、効果的な支援につなげたいと思う。

また災害公営住宅の中での世話役となる自治会長のような存在をいかに作るか。大船渡でも災害公営住宅には集会所が設けられコミュニティの形成に役立つものになるはずだが誰が鍵の管理をしたり、取りまとめたりしていくのか。高齢者も非常に多い中で課題になると感じている。

夢ネット大船渡としても主に地域の会員等をたよりにしてサロンなどを企画していきたい。マンパワーも限られるので災害公営住宅全てには無理だが、何箇所かを支援モデル地区のようなかたちで設定し重点的に支援しながら他の災害公営住宅へも輪を広げていきたい。

―― Q.どのような取り組みをされているのですか?

気仙地域の復興の様子を伝える「復興ニュース」を配布しながら、会員や知り合いを通じて見守りをしていく。個人情報の壁もあり、災害公営住宅に移行した際にはどこに誰が入っているかはわからないということが起きるので、まずは把握するということが必要になる。また、災害公営住宅でのサロン活動も行いたい。その中で入居者の世話役的な存在が欠かせないが、行政が段取りをしてやらなければならないし、場合によっては積極的に連携もしなければならない。市内でも都市部の災害公営住宅は様々な地域からの入居が予想されるので特に重要。そうしたところをモデル的に支援したいと思う。

しかしながら、行政に頼るだけでもいけない。住民自身が見守り、住民自身が課題意識を持ってコミュニティ形成を担っていく環境づくりが一番大事になる。

―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?

会員は地域内に23人、地域外が10人ほど。三陸鉄道のふれあい待合室なども含め9人が雇用、非常勤で3人、いわて復興応援隊が2人。課題の全てに取り組むことはおそらく難しいので、何に取り組むべきかしっかり考えながら臨みたい。

―― Q.困っていることはありますか?

大船渡は外部からの観光などに対する受け入れ体制が一本化されておらず、逆にわかりにくい。経済の復興、雇用の創出、交流人口の拡大がこれからの地域課題になる中で、その整備が必要になる。

仮設住宅の集約も簡単ではない。さまざまな状況の人が住んでいる中で集約を急ぐのは難しい。仮設に残ってくるのは経済的にも精神的にも厳しい人が多いようだ。その人たちに移転を求めていくことは丁寧な説明と調整が必要になる。

―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?

災害公営住宅でのイベントをおこなっていきたいので、手品、歌、おどり、手芸など何か人が集まって行えるものを提供できる方と連携していきたい。

岩手県でも人口流出対策が叫ばれている。人口はどんどん減っていく。現在の規模でまちを作っていっても、人がいなくなる。災害公営住宅でも人がすまなくなる。これからも被災地に足を運び人口の流動を促したい。ただ、外からくる方々を現地でコーディネートするためにも資金が必要となる。しっかり経済を回しながら人を呼び込む体制づくりにもご協力いただきたい。

<了>


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2014年7月 9日 13:11

【レポート】仮設住宅の見守りとコミュニティ形成、いまとこれから

訪問先:NPO法人陸前たがだ八起プロジェクト
訪問日:2014年6月13日
取材者:中野圭

こんにちは、岩手の中野です!
今回は陸前高田市モビリア仮設住宅の支援に取り組むNPO法人陸前たがだ八起プロジェクトの蒲生さんにお話をお伺いしました。

―― Q.取り組んでいる地域課題は?

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震災当時、陸前高田市のモビリアというキャンプ場の支配人をしていた。震災後多くの避難者がモビリアに押し寄せてきたので、そのまま避難所として開設した。その後、避難所が解散し、そのまま仮設住宅ができた際に外部支援者から「これからだよ」という言葉がかけられた。過去の震災事例では孤独死、やりがいづくり、いきがいづくりという課題がいかに大きかったかをその時に学んだ。現在はモビリア仮設住宅団地に常駐しながらの支援を行っている。コミュニティの形成を目的とした自立支援サポートが大きな活動となっている。

今年の終わり頃から仮設を出ていく人が増えるだろうと感じている。モビリアは市内でも最後まで残る仮設団地のひとつと予想されており、今後入退去が増えるのでその点もしっかり意識しておきたい。

―― Q.どのような取り組みをされているのですか?

全般的に言えばサポートセンターの役割を果たしている。住民の相談窓口、自治会サポート、団地へのイベント受け入れ調整、現在は少ないが物資配布など。特に自立を促すためのイベントのサポートや、コミュニティ形成も兼ねる畑作業、高齢者の自主的なお茶会、手芸サークル、麻雀サークル、男の料理教室など。

今後は仮設間、地域間、在宅と仮設の溝など、いまだに埋まっていないさまざまな「溝」をつなぎ、フォローしていくことがどうしても必要になってくるので、モビリアだけの支援というわけにはいかないと感じている。その溝を埋める作業が広い意味で本質的なまちづくりにつながると感じている。

―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?

常勤で4名のスタッフ、理事が代表含め5名、監事1名。中越防災安全推進機構やNICCOといった外部からの応援者に支えられた部分も大きい。

―― Q.困っていることはありますか?

地域として、復興の全体感としては落ち着いてきたと思うが、NPO/市民活動セクターの活動がまだ求められている中にあって、その活動環境はまだ整っているとは言えず、不安定な部分がある。自分たちの組織もそうだし、地域としても、この陸前高田でしっかりとした立ち位置を作り出していかなければならない。

―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?

復興というのは被災地沿岸多様だが、まだ復興支援は必要だと感じている。その中で今後一番危惧しているのは人口流出。震災以前から進行していたこの課題は、震災を経て一気に進んでいる。もちろん被災地だけの課題ではないし、簡単な解決策があるわけでもないので、全国の皆さんのお知恵やお力をぜひ貸してほしいと感じている。

<了>


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2014年7月 2日 09:02

(お知らせと言い訳)なぜ突然「レポート」なるものが始まったのか?

事務局の岡坂です。

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先週からこのブログで突然「レポート」なるものが始まりました。

あまりに突然過ぎて正直僕も驚きましたので、少し内部事情を暴露しつつ、このレポートがなぜこのタイミングで出てきたのかちょっと解説します。


1.起案者は事務局員「I」くん

このレポートは実は「あるもの」のために作っています。Walk with 東北のようなキャンペーンと違うものですが、カタチになる「あるもの」のために、その材料としてしたためています。一連の計画を起案したのは宮城の担当の事務局員Iくんです。手前味噌かもしれませんが、このIくん、宮城県内の復興に取り組んでいる団体のことなら多分一番知っている人です。「最近どう?何か〇〇みたいな活動している〇〇な団体知らない?」と聞くと直ぐ出てきます。そしてその団体のことをよく知っているので詳細に語ります(決しておしゃべりな男じゃないけど)。


2.実は黙々とやっていることが仇に

真面目な活動者はあまり多くを語らないものです。そして件のIくんも例外ではありません。さらに岩手担当、大船渡出身のNくんも、福島担当の環境活動一筋のS殿もその例外ではありません。そう、彼らは毎日グルグルといろんな団体を回って、レポートに書かれているような話のもっと長くて濃いのを、がっちり聴いているのです。でもそんなことJCNの事務局より外の人は知らない。まさかあの現地会議のテーマ設定がそんな血と汗と...でできているなんて多分知らない。


3.「最近どう?」=「最近(東北の復興に取り組んでいる活動団体の動向)どう?」と同じ?

そしてその数は、なんと昨年度1年間だけでも、のべ574団体になったのです。名寄せすると249団体になります。そんな彼らに「最近どう?」と聞くことは「最近(東北の復興に取り組んでいる活動団体の動向)どう?」と聞いてしまうことを意味します。彼らと雑談するときは気をつけましょう。もれなく1時間ほどが東北の復興を知るものすごい有意義な時間になります。...というわけで起案者のIくんはそれをいろんな人に伝えるべく、あるものをカタチにして作ることを心に決めます。それが何かはまだヒミツです。


(結局、言い訳にもお知らせにもなっていないような気もしますが)では、そんな彼らの腐心の成果を温かい目でもう少しおまちください。

文責/岡坂 建


2014年6月27日 18:51

【レポート】芦の口・復興住宅の周辺住民による「ウェルカムマップ」づくり

訪問先:芦の口復興公営住宅支援者連絡会
訪問日:2014年5月28日
取材者:池座剛

先日「芦の口復興公営住宅支援者連絡会」(仙台市太白区)に参加させて頂き、参加メンバーに活動の経緯や悩みなどについてお聴きしました。

―― Q.取り組んでいる地域課題は?

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芦の口の復興公営住宅は民間企業の旧社宅をリフォームしてつくった集合住宅です。今年の4月から移転してくる人たちは、長い避難生活を送った後にやっとの思いで恒久的に住める環境に移るわけですが、不慣れな場所で当然、地域のことや住民のことも分からず不安な思いで生活を始めなければなりません。そこで、これから一緒に暮らしていく地域住民として、復興公営住宅に移転してくる人たちと周辺住民が共に気持ちよく地域で暮らしていけるよう、受け入れ支援をしようと連絡会を立ち上げました。

―― Q.どのような取り組みをされているのですか?

芦の口地区では、地域住民と地区社協が中心となり、まずは移転してくる人たちにどの様な支援が必要かを話し合うために入居予定日の約半年前の2013年9月に「芦の口復興公営住宅支援者連絡会(連絡会)」を発足しました。話し合いの結果、計画を実効あるものにするため10名ほどの作業部会を設けしました。そして、移転してくる人たちが慣れない土地で少しでもスムーズに地域生活を営むことができるよう地域マップをつくろうという話になり「ウェルカムマップ※1」と名付け完成させました。また、移転してくる人たちに地図を渡すだけでなく、それをきっかけに顔の見える関係づくりをしようと引越日のお茶のおもてなし(お茶っこ)の実施や、入居者の戸別訪問、地域住民と移転住民との交流の場をつくるための「顔合わせ会」を開催しました。

―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?

連絡会は、芦の口地区の町内会、民生委員、地域包括支援センター、地区社協、太白区社協、区役所など、住民組織や行政、関係機関よって構成されています。

最初のきっかけをつくったのは実は、当時の太白区社協の熱き担当者の方だったのですが、その後も立場の異なる人たちがなぜここまで真剣に、信頼感を持ちあって受け入れ支援について議論し続けるのかというと、一番大きかったのは連絡会発足時の「合同研修会」の実施だと思います。

2013年10月にいち早く復興住宅への入居がはじまった美里町牛飼地区の取り組みを学ぼうと、美里町の関係者を招き芦の口の関係者と合同で研修会を行いました。それ以降、皆の課題意識や思いが一つになった気がします。

―― Q.困っていることはありますか?

あります。いつまで支援をすることが良いか、特別な扱いをすることで逆に地域に自然に溶け込めなくなるのではないか、活動を続けていく中で町内会に負担が重くなっていくのではないか、どこから活動資金を調達してくるかなどでしょうか。今後の取り組みについては、連絡会の皆で悩み、話し合いながら考えていきたいと思っています。※2

―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?

自分達の様な活動が他の地域に広がって何らかの形で役立つことは嬉しいことです。しかし、注目が集まり問い合わせや研修講師依頼、視察訪問などが増え過ぎると住民に負担が大きくなってしまいますので、その点はご配慮いただけると助かります。

<了>


【注釈・追記】
※1 ウェルカムマップとは、地域福祉関係者は地域資源マップと呼ぶもので、地域の公共施設や交通機関・病院・商店などが分かりやすく描かれた地図と裏側は町内会を含めたコミュニティ拠点の住所・担当者名・連絡先など活きた生活情報を掲載。町内会長さんを中心に作成されたそうです。
※2 移転される人たちが地域の町内会に入らず、復興住宅独自の自治会をつくった場合に、町内会としてどういった立場で支援ができるか、という不安もありましたが、移転者のほとんどが町内会に入ってくれたのでこの悩みは解消されました。

【関連情報】
「芦の口復興公営住宅」は比較的小規模の復興住宅で、2014年4月に12世帯の被災住民の入居が開始されました。地域住民が主体的に復興公営住宅の入居者支援に取り組むのは市内で先駆的なケースだそうです。
この様な取り組みがうまれた背景には上述通り、仕組みや制度というよりもそれらを活かした「人」の存在が大きいと感じました。町内会の皆さんや民生委員さん、太白区社協や地域包括支援センターの担当者など情熱と思いを持った地域住民の一人ひとりの行動が今回の様な取り組みを生んだのだと思います。

【問い合わせ先】
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2014年6月27日 12:55

第1回ケース検討会議in宮城を開催しました。

皆さま
いつも大変世話になっております。宮城担当の池座です。

ケース検討会写真.jpg

さて、先日、6月12日(木)に第1回ケース検討会議in宮城を開催しましたのでご報告致します。

昨年度のケース検討会は、JCN内部会議として、3県の被災地支援担当者と協力団体をお誘いする形で500以上のケースを取扱い、訪問した支援団体の困りごとや課題の解決策を協議し、助成申請書のチェックをしたり、企業に繋いだり、他地域や他団体の取り組みを紹介するなど個別団体の課題解決に注力しました。

今年度は、団体訪問を軸に個別団体のニーズには適宜応えつづけるものの、単一団体の課題から地域課題を解決する場へとシフトし、またJCN被災地担当の内部会議から、同じ課題意識を持って取り組む中間支援団体と一緒に解決策を練り役割を分担しながら動いていく予定です。

扱う地域課題としては、昨年度の現地会議で参加者や登壇者から出された様々な課題の中から、とくに地域横断的なものや、重要だと思われるものを選定し、重点課題/テーマとして1年を通して取り組んでいく予定です。
【重点課題例住民の移送手段不足、生活困難者のサポート体制、復興住宅周辺のコミュニティ形成、仮設住宅コミュニティの維持、マルチセクターによる復興支援体制の確立など

今回のケース検討会議in宮城では、初回ということもあり、これまで現場で一緒に動いてきたパートナー団体が集まり、どういった会議にしていくべきかを丁寧に協議し、組織を越えた「合同ケース検討会議」を開催していきましょう、という運びになりました。

組織の協働というのは言うは易しで、現場のスタッフ同士が意気投合しても、それぞれの団体のライバル意識、事業内容の相違、予算状況、事務局との意識の隔たりなどが壁となり実際にはなかなか難しいものの、
今回の会では団体関係者が「どこまで一緒に取り組めるか」について腹を割り建設的に話しをしてくれました。会議中に実は何度も胸が熱くなったのですが、「団体や個人のエゴよりも本当に復興のことを最優先に考えている人たちなんだ」と強く感じました。

引き続き、行政、社協、その他支援関係者とも最善の協働の形を模索し続けるつもりですので
何卒よろしくお願い申し上げます。

【メモ】

・ケース検討会議は各県ごとに2か月に1回の頻度で開催

・毎回扱うテーマを事前に定め、議論に参加すべき(該当テーマの課題解決に従事する)活動団体をお誘いしながら10団体前後で解決策を練る(例:制度提案・ロビー活動、研修、資金調達)

・悩みは、多くの団体に参加してもらいたいが一定数を越えるときちんとした議論ができなくなってしまうこと...

・現地会議は年3回から2回に頻度を落とし開催


文責/池座 剛



2014年6月27日 11:51