東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

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【レポート】芦の口・復興住宅の周辺住民による「ウェルカムマップ」づくり

訪問先:芦の口復興公営住宅支援者連絡会
訪問日:2014年5月28日
取材者:池座剛

先日「芦の口復興公営住宅支援者連絡会」(仙台市太白区)に参加させて頂き、参加メンバーに活動の経緯や悩みなどについてお聴きしました。

―― Q.取り組んでいる地域課題は?

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芦の口の復興公営住宅は民間企業の旧社宅をリフォームしてつくった集合住宅です。今年の4月から移転してくる人たちは、長い避難生活を送った後にやっとの思いで恒久的に住める環境に移るわけですが、不慣れな場所で当然、地域のことや住民のことも分からず不安な思いで生活を始めなければなりません。そこで、これから一緒に暮らしていく地域住民として、復興公営住宅に移転してくる人たちと周辺住民が共に気持ちよく地域で暮らしていけるよう、受け入れ支援をしようと連絡会を立ち上げました。

―― Q.どのような取り組みをされているのですか?

芦の口地区では、地域住民と地区社協が中心となり、まずは移転してくる人たちにどの様な支援が必要かを話し合うために入居予定日の約半年前の2013年9月に「芦の口復興公営住宅支援者連絡会(連絡会)」を発足しました。話し合いの結果、計画を実効あるものにするため10名ほどの作業部会を設けしました。そして、移転してくる人たちが慣れない土地で少しでもスムーズに地域生活を営むことができるよう地域マップをつくろうという話になり「ウェルカムマップ※1」と名付け完成させました。また、移転してくる人たちに地図を渡すだけでなく、それをきっかけに顔の見える関係づくりをしようと引越日のお茶のおもてなし(お茶っこ)の実施や、入居者の戸別訪問、地域住民と移転住民との交流の場をつくるための「顔合わせ会」を開催しました。

―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?

連絡会は、芦の口地区の町内会、民生委員、地域包括支援センター、地区社協、太白区社協、区役所など、住民組織や行政、関係機関よって構成されています。

最初のきっかけをつくったのは実は、当時の太白区社協の熱き担当者の方だったのですが、その後も立場の異なる人たちがなぜここまで真剣に、信頼感を持ちあって受け入れ支援について議論し続けるのかというと、一番大きかったのは連絡会発足時の「合同研修会」の実施だと思います。

2013年10月にいち早く復興住宅への入居がはじまった美里町牛飼地区の取り組みを学ぼうと、美里町の関係者を招き芦の口の関係者と合同で研修会を行いました。それ以降、皆の課題意識や思いが一つになった気がします。

―― Q.困っていることはありますか?

あります。いつまで支援をすることが良いか、特別な扱いをすることで逆に地域に自然に溶け込めなくなるのではないか、活動を続けていく中で町内会に負担が重くなっていくのではないか、どこから活動資金を調達してくるかなどでしょうか。今後の取り組みについては、連絡会の皆で悩み、話し合いながら考えていきたいと思っています。※2

―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?

自分達の様な活動が他の地域に広がって何らかの形で役立つことは嬉しいことです。しかし、注目が集まり問い合わせや研修講師依頼、視察訪問などが増え過ぎると住民に負担が大きくなってしまいますので、その点はご配慮いただけると助かります。

<了>


【注釈・追記】
※1 ウェルカムマップとは、地域福祉関係者は地域資源マップと呼ぶもので、地域の公共施設や交通機関・病院・商店などが分かりやすく描かれた地図と裏側は町内会を含めたコミュニティ拠点の住所・担当者名・連絡先など活きた生活情報を掲載。町内会長さんを中心に作成されたそうです。
※2 移転される人たちが地域の町内会に入らず、復興住宅独自の自治会をつくった場合に、町内会としてどういった立場で支援ができるか、という不安もありましたが、移転者のほとんどが町内会に入ってくれたのでこの悩みは解消されました。

【関連情報】
「芦の口復興公営住宅」は比較的小規模の復興住宅で、2014年4月に12世帯の被災住民の入居が開始されました。地域住民が主体的に復興公営住宅の入居者支援に取り組むのは市内で先駆的なケースだそうです。
この様な取り組みがうまれた背景には上述通り、仕組みや制度というよりもそれらを活かした「人」の存在が大きいと感じました。町内会の皆さんや民生委員さん、太白区社協や地域包括支援センターの担当者など情熱と思いを持った地域住民の一人ひとりの行動が今回の様な取り組みを生んだのだと思います。

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2014年6月27日 12:55