震災直後から支援に携わってきた県内グループが協力して平成27年12月、「埼玉広域避難者支援センター(福玉支援センター)」が設立されました。震災から6年が経過しようとする今、新組織に託す思いを伺いました。
平成24年春の創刊以来、通算50号を超える「福玉便り」
埼玉県では福玉支援センター設立以前から、埼玉県労働者福祉協議会(労福協)、ハンズオン!埼玉、コープみらい埼玉県本部が協働し、県内に避難している方に向けた情報誌「福玉便り」を毎月発行してきました平成24年春の創刊以来、ほぼ月刊で発行を続け、通算50号を超えています。発行部数は約4,000部。県内各市町村の広報誌と一緒に戸別配布するなどして、避難している世帯のほとんどに届けています。
さまざまな団体の活動やイベント紹介のほか、住宅問題など、避難者に必要な情報を丁寧に取材して記事にしているのが特徴です。避難している方の生の声を載せることにも力を入れています。県内で生活する「人」に光を当てることで、「自分たちのことを忘れないでいてくれる」との感想が寄せられるといいます。震災後に散り散りになっていた知人の元気な様子を誌面で知り、新しいつながりを生むきっかけにもなっています。
「福玉便り」の発送作業
福玉支援センター理事で大学教員でもある原田峻さんは「、いろいろな立場や考えに寄り添えるよう、偏りのない誌面構成に気を配っている」とのこと。たとえば、定住支援に関する情報ばかりを載せれば、帰還を考えている人が、その選択を肯定されていないと感じてしまうかもしれません。「どんな人も否定しないメディアでありたい」と原田さん。避難している現状を、ありのまま受けとめることが支援の第一歩だと考えているのです。
これまで4年間で具体的な成果もありました。避難指示区域からの避難者のNHK受信料の免除に関する取材記事がきっかけとなり、NHKFMさいたまのラジオ番組で毎月一回「福玉便りのコーナー」が平成27年1月から始まっています。大手メディアに取り上げられることで、「福玉便り」の輪がいっそう広がりました。
「福玉便り」にかかわる支援者をはじめ、避難している当事者の方々、復興支援員の方々などが集まる場として、「福玉会議」があります。労福協の主催で平成24年7月から始まり、現在も当事者と支援者を結ぶ情報共有の場として隔月で開催されています。
支援者、当事者、復興支援員などが集まる「福玉会議」
「福玉便り」や「福玉会議」のおかげで、顔の見える関係は築けており、団体・グループ間の交流も盛んです。このタイミングで、新組織として福玉支援センターを設立した思いはどこにあるのでしょうか。
労福協の専務理事でもあり、福玉支援センター理事の永田信雄さんは、こう語ります。「新たなセンターにすることで、労福協などと縁が薄かった人も含め、これまで以上にいろいろな人にかかわってくれたらいい」。
原田さんも、まだまだ腰を据えた継続的な支援体制が必要だと見ています。「『被災者』と『被災地』の復興が一致しないのが広域避難支援の難しさ。ますます多様な支援を続けないと」。センターが掲げたモットーは「しっかり、じっくり、ゆっくり、と」。その言葉通りの継続的な支援が求められます。