岡山県への避難者の相談をワンストップで受ける窓口として活動をスタートした「ほっと岡山」。時が経ち、悩みやニーズが個別・複雑化することを受けて、専門家との「つなぎ手」として避難者を支え続けています。
岡山県には、震災後に県が「避難者受入支援」をいち早く表明したことや、自然災害が少ないことなどを背景に、多くの避難者が訪れています。
ほっと岡山は、避難者支援団体やシェアハウスを運営する10の団体によって、情報共有を目的に平成24年につくられました。
平成26年にタケダ・赤い羽根広域避難者支援プログラムの助成を受けたことをきっかけに「うけいれネットワーク ほっと岡山」として活動基盤を強化。岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館(きらめきプラザ)の2階、ゆうあいセンター内に事務所を構え、避難者相談のワンストップ窓口としての機能を設けました。さらに、行政や専門機関への橋渡しや情報発信へと、活動の幅を広げています。平成28年には一般社団法人ほっと岡山として法人化し、平成28年11月現在、当事者と支援者により6人のスタッフが運営に携わっています。
相談員ミーティングの様子
「平成24年に活動を始めた当初は、住居や就労、子どもの就学に関する質問がほとんどでしたが、現在は避難・移住後の暮らしの相談や、長期の避難生活が及ぼすさまざまな悩みが増え、避難元へ戻ることについての相談も受けています」と、ほっと岡山代表理事の服部育代さんは語ります。昨今は岡山県内の定住・移住に関する情報提供のほか、福島県内の様子がわかる情報誌の配布や、福島県内各種相談窓口の案内なども提供しています。
寄せられる相談事の最近の傾向は、課題が複雑化し、一人あたりの対応回数が増えていること。そして、内容も、子どもの教育問題や離婚、DVや生活困窮など、深刻さを増していることがあげられます。平成27年頃からは不登校に関する相談も多く寄せられるようになりました。これらに対応するために、ほっと岡山では、精神保健福祉士や司法書士、臨床心理士、医療機関といった専門家・組織との連携を深めています。
平成27年には、県や県内の自治体、社協等を招いて、情報共有の場を設けました。議員向けのレクチャーやメディアへの情報提供など、外部発信にも力を入れています。「私たちの役割も『相談』から『話を聞いて、丁寧につないでいく』ことに変化しているのです」と服部さんは語ります。
ほっとおたよりNEWS 2016年11月号より
平成28年からは専門家を講師に招いての連続勉強会「311スタディーズ」の隔月開催を始めました。さらに、県内支援団体や避難当事者グループの取り組みを支えるためのコーディネーターを派遣し、課題解決能力の向上に取り組んでいます。
「一人ひとりが、その人らしく生きられる」ための支援を、ほっと岡山は理念に掲げています。「支援する側も、される側も、何かしらの『言いにくさ』を感じることは必ずあると思います。『避難』や『原発事故』はデリケートなテーマですが、特定のトピックや考え方をタブー視したり否定することなく、誰もが一緒に理解し合えるための場をつくっていきたいと考えているのです」。
ほっと岡山代表理事 服部育代さん