「避難者」とのかかわり 〜支援のカタチ〜

当事者団体

『うみがめのたまご』〜3・11 ネットワーク〜《宮崎県》

コミュニティづくり

平成23年7月、3人の母子避難者が宮崎で出会ったことから生まれたのが「『うみがめのたまご』〜3・11ネットワーク〜」です。九州の避難者同士が交流する場として始まった活動は、地域とつながり新たなステージを迎えています。

こころの垣根を越えて、安心して出会える場をつくる

平成28年11月には大分でふくしま→おおいた避難者相談・交流会を開催した

避難者がゆるやかにつながれる場づくりを目指して

「同じ境遇の人たちが、安心して想いを分かち合える場をつくりたい」。そんな気持ちから、うみがめのたまごは誕生しました。団体名は、いのちをつなぐために宮崎を訪れるウミガメの母親の姿に自分たちを重ね合わせたことに由来しています。

避難者といっても、避難元や避難形態などの違いによって、抱える想いはさまざまです。自分たちの活動には意味があるのか。当初は自問自答の連続だったと、関東から自主避難したうみがめのたまご代表の古田ひろみさんは振り返ります。

転機が訪れたのは、震災から約一年後のこと。地震や津波で家や家族を失い、それを乗り越えて生きている、東北の被災地の人たちの姿に触れたことでした。「自分たちも、もっと、東北被災三県の人たちのことを考えてゆきたい」と、「当事者」から「支援者」へと意識を変えて活動にあたることを決意しました。

支援の対象も、母子ばかりでなく、年配者や男性、移住者などへと拡大。平成28年11月現在、九州各地で約200回の交流会を開催し、500世帯以上の人たちとつながっています。

活動の発展と「男女共同参画」という視点

福岡県で広域避難者の支援にあたる「被災者支援ふくおか市民ネットワーク」との出会いは、九州全域に視野を広げるきっかけとなりました。当初は宮崎県内を対象に行なっていた戸別訪問も、平成27年からはタケダ・赤い羽根広域避難者支援プログラムを活用して九州7県に拡大。さらに、現在は被災地に帰還した「元避難者」への支援も手がけています。

平成25年度以降は、行政の委託事業などにも取り組むようになり、まちづくり活動といった、生活者視点の活動が増えてきています。

避難生活が長引くなか、個人の抱える課題は複雑化していきますが、その背景にあるものは必ずしも「避難」に起因するものばかりではありません。「男女共同参画」という考え方に出会ったことで「母親なのに」「男だから」などといった、「性別役割分担」にとらわれない視点を得たそうです。

こころの敷居を下げるために

平成28年6月には、宮崎市内のマンションの一角に「3・11からつながるみんなの家『まあや』」を開設しました。「まあや」は「また会おうや」という意味。九州に避難している人たちを見守り、いつでも帰ってこられる実家のような存在を目指しています。

「支援を提供する側、受ける側双方の精神的な敷居を下げることが大切」と、うみがめのたまごでは、さまざまな工夫をしています。「重たい話を受け止められるだろうか」という不安から支援員を集めることに苦労した「訪問支援」活動は、専門家の助言を得つつ、「宮崎の美味しいお茶を飲みませんか」というアプローチへと切り替え、「お茶のいれ方講座」を兼ねた、地域の人たちと一緒に学べるプログラムへと進化させました。

「避難者に限らずつながりが必要な人たちに気軽に立ち寄ってもらえる、あたたかな居場所をつくりたい」。うみがめのたまごの活動は、地域に新しい風をもたらしています。

『うみがめのたまご』 〜3・11ネットワーク〜
〒880-0844
宮崎県宮崎市柳丸町121-3
パストラル柳丸i-101
Tel. 0985-25-2810
 http://umitama.info/
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