大阪に拠点を置く支援団体「まるっと西日本」は、生活者の視点に立つ、きめ細やかな情報発信に力を入れています。そこには、阪神・淡路大震災を体験した人たちの教訓が活かされています。
支援情報NEWS
「新しい生活を始めるためには、なんらかのつながりが必要。避難者が出会える場所をつくれたら・・・」。当事者自らの生活の実感をもとに発足したのが、まるっと西日本です。避難者同士つながりを増やす場をつくろうと交流会を開催し、相談を受ける窓口を設置。「支援情報」の配信を始めました。当初は毎週、現在も月に3回ほど、その時々の生活ニーズに合わせた情報がメール配信され、支援団体を含む900人以上の人たちに読まれています。
「被災県や東日本でしか配信されない情報や、行政が発信する情報をわかりやすく噛みくだいたものを掲載するように心がけています。なかでも重要なのは、日々の生活に直結する、経済支援に結びつくニュースです。新たな支援策や奨学金の情報など、その月に必ず読んでもらいたい情報をトップページにおくように心がけました」。まるっと西日本代表世話人の古部真由美さんは、情報発信の狙いをこう語ります。
メールは苦手という高齢者の声に応えて、情報誌の発行も始めたところ、大阪以外の避難者や、支援団体からも欲しいという声があがりました。現在は行政の協力を得て、関西2府4県の全避難世帯へ、毎月無料で支援情報が届けられています。
平成28年3月11日に開催した交流会
阪神・淡路大震災を経験した人・専門家やメディアが多いことが、関西の支援に与える影響は大きいと、古部さんは語ります。情報誌をつくる際には、災害支援や復興制度について詳しい関西学院大学の災害復興制度研究所と連携することによって知見を得ました。NHK大阪放送局のラジオ番組「関西ラジオワイド」(ラジオ第一放送)では「県外避難のみなさんへ」というコーナー(原則毎月最終月曜日17時台)に古部さんが招かれ、毎回支援情報を紹介しています。
メール、情報誌、ウェブ、ラジオとあらゆる方法を駆使した情報発信は高く評価され、平成26年5月には「県外避難者に届きにくい支援情報を収集・発信し、避難者の居住不安の解消に大きな成果をあげた」として、日本居住福祉学会から「居住福祉賞」を受賞しました。
NHK関西ラジオワイド「県外避難者のみなさんへ」
関西には、阪神・淡路大震災からの復興のさなかにいる人たちがたくさんいます。被災者の高齢化や孤独など、今もなおケアを必要とする課題も少なくありません。こういった教訓からも、東日本大震災の被災者にも、息の長い支援が必要なことは明らかです。
まるっと西日本は、「孤立させないためには、体温を感じる距離で対話できる関係性が必要」だと、人生経験豊富な熟年スタッフを中心に、戸別訪問もスタートしました。「この土地にいると、支援する人がいなくなることはきっとないだろうという希望を持つことができます。新たな人間関係が生まれることが、その土地での生活を支える力につながります。これからもずっと、暮らしの再生に寄り添う存在であり続けられたらと思っています」。