「避難者」とのかかわり 〜支援のカタチ〜

当事者団体

えひめ311 《愛媛県》

戸別訪問 コミュニティづくり

スタッフ全員が福島からの避難者であり、四国全域を対象に活動を展開する「えひめ311」。行政や専門家と連携しながら、交流会にくることが困難な避難者には「おせったい訪問」という個別訪問を展開しています。

四国全域で個別訪問へ

※えひめ311では、個人と向き合うという思いから「戸別訪問」でなく「個別訪問」の表記を採用しています。

スタッフ全員が当事者。「寄り添い」を原点に

えひめ311が誕生したきっかけは、東日本大震災後、松山市石手寺の住職の呼びかけにより開催されていた「避難者交流会」です。「東北からこんな遠くに避難している人がいるのだろうかと思っていたら、30〜40人ほど集まっていて驚きました」と語るのは、双葉町から家族と共に実家のある愛媛に避難したえひめ311事務局長の澤上幸子さん。いつの頃からか、訪れる人たちから個別に悩み相談を受けるようになり、これらに対応していく体制が必要だと地域の人たちの力を借りて「えひめ311」を設立。平成24年5月にNPO法人として登記しました。

こだわりは、スタッフ全員が当事者であること。当事者であるからこそ、受け止められることがあると「一人一人の心に寄り添い、共に課題を解決する」ことを理念に掲げ、弁護士や大学の先生、地元の中間支援組織など、専門性を持った人たちとつながりながら活動を展開しています。NPO法人として立ち上げが早かったこともあり、愛媛以外の地域からも相談を受けるようになり、四国全域を視野に入れた活動を展開することになりました。

えひめ311のスタッフのみなさん

「おせったい訪問」を通じて、気軽で親戚のような関係づくりを目指す

当初は住まいの確保や子育てなど、目の前の生活に関する内容が多かったと、澤上さんは振り返ります。

「交流会」を開催し、さまざまな意見や情報を交換する場も設けましたが、気にかかるのは、こういう場に足を運べず孤立している人たちの存在でした。当初は自費で訪問活動をしていましたが、専門家の助言を受けて助成金を申請し、四国のお遍路文化にちなんで「おせったい訪問」と名付けた個別訪問をスタートします。農家の方の協力を得て「支援物資」となるお米を用意し、「お米をお届けします」と打ち出すことによって、一人でも多くの避難者とつながることのできる環境を整えました。

支援している、助けているという感覚ではなく、同じ故郷の人に会いに行くという感覚でスタートしました。行政を通じて「おせったい訪問」の情報を避難者に郵送してもらい、返信が届き、訪問日時のお約束をして避難者宅へと訪れる。そして、物資を届けると、敢えて立ち入ることはせず、ただ気軽におしゃべりをして帰っていく。「もし必要があれば、また気軽に連絡をしてもらえる関係をつくること」を心がけ、「避難者の方々がしんどい時にふと思い出してもらえるような存在」になれたらと思っているそうです。

避難者にお米を届けるえひめ311 事務局長 澤上幸子さん

心の安らぐ場に辿りつくために

えひめ311は、防災福祉の拠点として「古川ふれあい農園」を開設、地域とつながりを構築しながら、支援活動を展開しています。また、福島や関東の放射線量に不安を抱く親子を招いた「保養キャンプ」も開催しました。

「避難当時まだ小さかった、おじいちゃん・おばあちゃんと離れて暮らすことになった子どもたちは、今何を考えているのだろう。故郷に帰る人たちはどんな想いを抱えているだろう。復興とはなんなのだろうか…。考えることは尽きません」と、澤上さんは語ります。

「一人一人の心が、本当に安心と思えるところに辿りついて欲しい…」。当事者かつ支援者としての切実な想いを胸に、えひめ311は活動を続けています。

愛媛でしか食べられないめずらしい灰屋いも

福島の子どもたちと一緒にみかん狩り

特定非営利活動法人 えひめ311
〒790-0871
愛媛県松山市東一万町2第3森ビル1階 協働オフィス内
Tel. 089-993-8329
 http://ehime311.official.jp/
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