東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

JCNツアー

JCNバーチャルツアー in 宮城

ツアー概要

開催時期 2020年12月5日(土) 16:00-18:00
開催方法 オンライン(Zoom)にて開催(気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザ スクエアシップ)
主催 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)
助成 復興庁コーディネート事業
参加費 無料
参加者数 62名(参加者54名、登壇者4名、スタッフ4名)

企画趣旨

開催趣旨

復興と言っても、地域や人、立場によってさまざまな見方、解釈があります。10年目を迎えようとしている宮城の今を、10年前の映像と比較しながら「見て」いただき、そこで活動する方の声を「聞き」、新聞や報道では伝わらない熱量や空気を感じて、感じたことを「話して」いただき、宮城の今を「知り」、今後の関り方を考える機会としていただきたいと思い企画しました。

岩手、宮城、福島共通テーマ

答えは、東北にある!

東日本大震災の現状を「見る」、「聞く」、「話す」、「知る」

宮城テーマ

あのときの風景と今。これからの宮城との関り方を考える

動画コンセプト

1泊2日の行程を2時間で体験していただくために、事前にツアー訪問先やインタビューを録画しました。撮影した動画を一緒に見ていただき、バーチャルツアーを体験していただきます。

コンセプト① 人の心情に触れる

活動を続ける人の話しを聞き、その人の目線で課題を知り、その人とどういう関りができるのかを考える。

コンセプト② 10年前と今の二つの時間軸を旅する

10年前の被災地と今の被災地を同時に見て、10年の歩みに想いを寄せる

コンセプト③ 宮城の復興の今を知る

10年前と今の風景、人の話しから伝わる今の宮城を感じる

プログラム/登壇者/内容

取材先

  • 一般社団法人 日本カーシェアリング協会 代表理事 吉澤武彦氏
  • 公益社団法人 3.11みらいサポート 専務理事 中川政治氏
  • 一般社団法人 復興みなさん会 理事 工藤真弓氏
  • 気仙沼まち大学運営協議会 事務局 成宮崇史氏
  • NPO法人 ピースジャム 代表 佐藤 賢氏

動画撮影/編集

會津製作所

2011年名取、石巻、女川動画提供

三浦隆一

プログラム

  1. 開会
  2. 動画視聴(1日目)
    事前に取材した団体のインタビューや現地風景を視聴
  3. トークセッション
    ・日本カーシェアリング協会:吉澤氏 ・3.11みらいサポート:中川氏
  4. 動画視聴(2日目)
    ・事前に取材した団体のインタビューや現地風景を視聴
  5. トークセッション
    ・気仙沼まち大学運営協議会:成宮氏 ・ピースジャム:佐藤氏
  6. 閉会

ツアー行程

1日目
仙台市荒浜地区
震災遺構荒浜小学校
仙台市の津波浸水域の荒浜地区を背景に、東日本大震災の復興の進捗をお伝えします。
名取市閖上地区
2011年の閖上
2020年の閖上
(かわまちてらす閖上や災害公営住宅など)
2019年にまちびらきをした新しい閖上と、震災直後の閖上を比較して、大きく変わった街並みをみて、コミュニティについて想いを寄せていただきます。
インタビュー
一般社団法人 日本カーシェアリング協会
代表理事 吉澤武彦氏
車を失った地域へ、車を提供し、シェアすることでコミュニティをとり戻す活動を行っている吉澤さんからお話を伺います。カーシェアから始まる新たな事業の数々、ご期待ください。
石巻市南浜・門脇エリア
2011年の南浜・門脇
2020年の南浜・門脇
(石巻南浜津波復興祈念公園予定地、門脇小など)
石巻南浜津波復興祈念公園の予定地となり、大きく風景が変わりつつある南浜・門脇エリア、2011年当時の映像と比較し、震災の教訓を残すことについて想いを寄せていただきます。
インタビュー
公益社団法人 3.11みらいサポート
専務理事 中川政治氏
東日本大震災メモリアル南浜つなぐ館にて、失われずにすむ命が、失われない社会をつくるための、東日本大震災の教訓を伝える活動についてお話いただきます。
2日目
女川町
2011年の女川
2020年の女川
(震災遺構:旧女川交番、地元市場ハマテラスなど)
新たな防潮堤を作らない決断をした女川町。2011年と2020年の女川の比較から、新たな街の賑わいをとり戻すために何が必要か、想いを寄せていただきます。
インタビュー
一般社団法人 復興みなさん会
理事 工藤真弓氏
避難所や仮設住宅へ、何度も移動しなければならなかった住民のみなさんの、心をつなぎとめる復興みなさん会の活動についてお話いただきます。
インタビュー
気仙沼まち大学運営協議会
事務局 成宮崇史氏
市民が主役となったまちづくりを推進する気仙沼。老若男女の地域活動を応援する気仙沼まち大学構想についてお話いただきます。
インタビュー
NPO法人 ピースジャム
代表 佐藤 賢氏
震災直後の乳児支援から、子どもを軸としたコミュニティ、そして母親世代の雇用創出についてお話いただきます。

トークセッション内容

1日目
  • 一般社団法人 日本カーシェアリング協会 代表理事 / 吉澤武彦さん(石巻市)
  • 公益社団法人 3.11みらいサポート 専務理事 / 中川政治さん(石巻市)

石巻での事業から見えてきたコミュニティの現状や課題
吉澤さん)課題の1つは高齢化。最終的に復興住宅に残る方は高齢、独居の方が多い。コミュニティカーシェアリングをサークル活動といっているが利用者は平均75歳。2つ目はコミュニティ形成。見ず知らずの人が集まり、田んぼだったようなところに一つ地域ができ、環境を作り、町内会を作っていかないといけない。3つ目は移動。高齢者が一か所に集まると孤立し、交通弱者の問題が出る。

公設の記念公園と追悼施設が建設される隣に民間施設を作る費用
中川さん)「MEET門脇」という施設を来年3月に向けて建設中。9000万円かかる。

東日本大震災を起因として始まった民間伝承活動の現状
中川さん)3県それぞれで震災直後から語り部等が始まった。活動はたくさんあったが、目に見えてわからなくなったり、減っていった。そこでアプリを開発し見える化した。他にも新しい街づくりを積極的に配信している方もいる。そういう方々をつなぎ、2017年11月に311メモリアルネットワークを設立。みんなで一緒に伝承していこう。東北であったこと、その教訓、災害から命を守れるような社会の実現を願う。もうすぐ会員500名。合わせて基金も集め、伝承活動を下支えしている。語り部は来る人がいないとしようがない。コロナの影響で私たちの団体も影響を受けた。新型コロナウイルス対策助成金を出し、オンライン配信等での活動を下支えした。

今後の5年、10年を見据えて活動しているか
吉澤さん)僕らは雛形作りを目標に石巻でいろいろな支援を受けて活動してきた。今度はあれを他の地域に還元していくことを目指したい。災害はどんどん起こっているが、東日本大震災のときも、今年の7月豪雨も車で苦労されているの変わらない。今後東日本大震災規模の災害が起こっても、なんらかの対応できるような体制を2025年までに築きたい。
中川さん)3月に311メモリアルネットワークで10年のフォーラムを予定。テーマは「10年を節目にしない」。メディアは10年報道をすると思うが、その後も被災地の生活は続く。だからこそ震災を伝える活動は大切になる。あんな被害が起きた場所だからこそ、そこが学びの場に変わっていくように地域の方とやっていきたい。

復興住宅のコミュニティ運営にも、コミュニティカーシェアリングの活動が寄与したか
吉澤さん)寄与できている自負がある。コミュニティカーシェアを地域のサークル活動としてやっているところでは、移動だけでなく、親睦がはかられている。車で定期的に買い物ツアーや旅行など、車を使ったコミュニティ活動になっている。

オンラインの語り部配信はじまっているか
中川さん)始まっている。毎月1回公開。オンラインとリアル両方併用していきたい。

クラウドファンディングで行っていること
吉澤さん)ふるさと納税を活用したクラウドファンディングを実施中。佐賀県で災害のときに迅速に車を配備して集めることを実現するための費用を集めている。返戻品は全て去年の佐賀豪雨で被災した事業者のみなさんの商品。被災した事業者の支援にもなる。
中川さん)MEET門脇の施設建設費用を集めている。阪神でも中越のかたちでもない、南浜石巻だからこそのことをやりたい。震災直後、悲惨な場所だったからこそ、学びの場所になる。あと3500万足りない。施設を1つ造ることよりも、東日本大震災を伝える新しいかたちの挑戦だと思っている。

2日目
  • 気仙沼まち大学運営協議会 事務局 / 成宮崇史さん(気仙沼市)
  • NPO法人 ピースジャム 代表 / 佐藤 賢さん(気仙沼市)

取り組みへの反応と、活動を定着させるために力を入れたいこと
成宮さん)人材育成プログラムは様々。移住、Uターンもあるが全体的には気仙沼市民が中心。これまで頑張ってきた人と震災後に来た人とが協働して新しい形が生まれている。地元の人というカテゴリーより、まちづくりや産業など、それぞれの分野がどうつながるかの仕掛けが必要。
佐藤さん)気仙沼市内だけでなく、南三陸などのお母さんもいる。子育てしながら働ける。子育てだけ、働くことだけでは精一杯になる。どう案分するか、楽しいこともシェアしていく必要がある。妊娠期から働けるが地元の中で周知できていない。知ってもらうことと受け皿を活性させていくことが大切。

市民参画を行う中で何を大事にしているか
成宮さん)気仙沼市は人口6万人。たくさんのチャレンジがあるが全て同じ想いかはわからない。理想は道行くじいちゃん、ばあちゃんが「なんかおもしろいから帰ってこい」と孫に言えるくらい関心をもつこと。協働や協奏が生まれるのは簡単ではない。持続的な未来を考えていくときには、ちゃんと対話していくことが必要。

活動の手ごたえ
成宮さん)たくさんある。例えば産業なら海外に挑戦したり、ライバルだったところが手を組んで新たな事業が始まったり。最近では行政と民間で新しい子育て事業を生み出した。これまでにぬま大学の卒業生は200名いるが、受講した子が今度はサポートとして関わっている。チャレンジの循環は嬉しい手ごたえ。

女川での若手にまちづくりをまかせたこと
三浦)女川も次世代を育成している町。これからのまちづくりを考えていた際、しがらみや意見の対立で復興が進まなかった。その中で、協議会の会長自ら「還暦以上は口を出さない」という提案をした。復興は長いスパンの事業になり、担うのは若手という考えで、年配から出てきた意見だった。

海外の事例を通して学んだこと
佐藤さん)僕は別に課題を解決しようと思っていない。課題は当事者が思っているもので立場によって問題意識は異なる。ただ、あり方や生き方に寄り添うことはできる。モロッコでは識字率が低く、職場が道端だったり、時間をかけて作ったものも買値は雀の涙。ここが良いダメでなく、一つひとつが重なって表れた結果だと思う。僕はその人が笑っていてほしいので、小さいことでも関わっていきたい。知識もリソースも持っていないので、知識のある人から学んでいきたい。

緊急期の母子支援から様々な活動が生まれているが、そのアイデアの源泉は
佐藤さん)誰でもできると思う。自分が何をしたいかではなく、まず何が起きているかを聞いたりするのがよい。例えば災害やインパクトを与えることが起きた時、どこで何が起きているか把握する。今回のコロナも本当に困っている人がいる。そこに対して消毒薬がないから渡すという支援より、どう寄り添うか考えたときに軸が生まれる。その軸をもって、支援を見極める。できていないところに軸や基準を置きたい。

実際に働いている人の声
佐藤さん)地元に帰ってきても待機児童問題で外に行けない、働けないという人がピースジャムで働いた結果、子どもを預けて働く選択より、子どもが小さい頃に伝えたいことを伝えられた、預けなくてよかったという声があった。そう実感してもらえたのが良かった。コミュニティの中で解決していくこともたくさんある。

町の人がチャレンジしていく上で、意識しているコミュニケーション
成宮さん)コミュニケーションの前にいろんなネットワークを持っていることが必要。 もう一つは、楽しいよってことをどうメッセージで伝えるか。一人ひとりにあった言葉にして提示していく。あとはしっかり伴走、支えることでチャレンジが生まれる。
佐藤さん)対峙しないように意識している。同じ方向を見て話す。同じ立場で話したい。何かを一緒にやるときは楽しく、おもしろく解決する。つまらないと持続しない。僕自身もだが、一緒にやってる人も同じ。

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