現地会議
第10回 現地会議 in 岩手
登壇者の主な発言 資料等 開催概要
登壇者の主な発言
【テーマ1】「理解を深める」-マルチステークホルダープロセスとは何か?-
田尻佳史 氏(認定NPO法人 日本NPOセンター)
課題を解決していくためには、利害関係者が協力し合うことを考えていかなければならない。特に被災地では、それぞれが個別に課題解決にあたっていたのでは間に合わない。
東日本大震災ではたくさんの民間が支援に動き、それへの期待も非常に高まっている。行政の場合は「制度」がないとどうしても対応できない。だからこそ行政は制度を守り、一律のサービスを提供するが、制度がないケースは民間でお願いします、ということになる。これまで行政と市民団体が協働という形を模索してきた。しかしながら1対1ではなかなか解決できない。そこで複数による協働、「マルチステークホルダープロセス」という考え方が生まれた。円卓会議では時に議論がどこにいくか不安だが、さまざまな立場、実践が融合し化学反応が生まれる。このプロセスこそがが重要。
円卓会議の方法には2つあり、事業テーマがあってそれに関わりそうなキーパーソンに集まってもらう方法と、多様なメンバーに集まってもらいそのメンバーで協働できる事業を考え組み立てる方法である。異質なセクターが2者よりは3者、3者よりは4者というかたちで関わり合い、その組み合わせが円卓会議において重要な要素となっていく。
【テーマ2】「事例を知る」-地域課題への取り組み事例を知る-
東洋平 氏(認定NPO法人 国境なき子どもたち 岩手事務所)
背景として、震災の影響によるこどもたちの遊び場の減少があった。遊び場となるべき校庭がなくなった上に、震災を免れたところも仮設住宅に使用されている。おとなの目線で建てられた仮設住宅は、子どもたちの居場所としては決していいものではない。また居住環境だけではなく、学校なども変わらざるをえず、その変化がこどもに与える影響は大きい。
遊び場がないという声があがる一方、公園はあった。住まいや環境が変わって周囲に気が回らない方も多かった。そこでマップを作成しようということになった。しかし支援団体はマップ作りのプロではない。各団体のつながりがある企業や専門家などを積極的に結びつけ合った。協力をお願いするときも依頼事項ではなく、趣旨をしっかりつたえた。こうしてお金をかけずに5,000部印刷した。震災後はじめて釜石にきたという家族から、マップがあって非常に助かったという声を聞けた。作成委員会では並列、対等な関係を尊重し負担の分散につながったが、確認や承諾を重視したので時間はかかった。
被災地では支援が必要ですと声を高くしても、支援は集まらない。しかし、被災地の問題はまだ解決せず、その問題に取り組んでいく主役は住民自身になる。今回お金がない中でマップという結果をつくれた過程が、参考になればと考えている。
大野覚 氏(認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ)
もともと茨城NPOフォーラムを開催しており、それがSRネット茨城につながる。国では円卓会議があったが、やはりそれでは大きすぎて身近ではないので、地域単位でやろうという意見があった。2011年にはじめて地域円卓会議を実施した。地域にはさまざまな課題があるが、みんなで解決しようという思いでやった。たとえば生活困窮者に食糧を届けようというフードバンク。地域で活動する団体を応援するためのコミュニティ基金など。もちろん中にはコモンズが声掛けして主体的に解決に動かしていったものもある。
事例のひとつはタウンモビリティ。低床バスが少なく、車いす利用者が移動しにくいという課題や、公共交通の利用を促進したい行政、低床バスの使用を増やしたいバス会社など、さまざまなステークホルダーが議論した。結果、まちなかフェスティバルというイベントへつながった。
マルチステークホルダープロセスでは、その仕掛け方もポイントである。事業ありきで集まるパターン、まずは集まってもらい課題を選定し事業につなげるパターン。後者だと時間がかかる。もちろんNPOだけでもだめ、男性だけ、女性だけ、高齢者だけでもだめ。多様でないとパワーが生まれにくい。その中でフリーにディスカッションをはじめ、生みの苦しみから一体感が生まれていく。茨城の場合、円卓会議は東日本大震災の1か月前だった。円卓会議でやってきた連携が東日本の支援につながった。円卓はキャンプファイヤーに近い。火をおこすときに着火剤でつけるか、ゆっくりつけるか。どう火をつけるかというプロデューサー的視点が大事。
資料等
開催概要
タイトル | マルチステークホルダー・プロセスによる復興とは |
---|---|
日時 | 2014年8月29日(金)13:00 - 17:00 |
会場 | ブランニューキタカミ コンベンションホール
(岩手県北上市大通り1-10-1) |
プログラム |
|
主催 | 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN) |
共催 | NPO法人 いわて連携復興センター 災害ボランティア活動支援プロジェクト会議 |
協力 | NPO法人 日本ファシリテーション協会 NPO法人 メディアージ |
参加者数 | 84名 |