現地会議
第8回 現地会議 in 岩手
登壇者の主な発言
【開会あいさつ】
佐野淳 氏(岩手県 復興局 生活再建課)
被災者おひとりお一人の状況を見ますと、今なお約36,000人の方がまだ応急仮設住宅やみなし仮設住宅に入居されておりますほか、この津波の影響で本県から約1,700人の方がたが故郷を離れ県外に暮らしていらっしゃいます。
また先ごろ県で公表しました、いわて復興ウォッチャー調査をみると、暮らしの再建に関する実感として「やや回復した」「回復した」と考える方の割合は、前回の調査より低下しているという状況もございまして、まだまだ復興は進んでいないというのが実感かと認識しております。
私ども岩手県庁復興局の生活再建課では、今後まちづくりの進展や災害公営住宅への入居など、被災者のかたがたのステージが大きく変化する時期をむかえるということを踏まえまして、これまでの取り組みに加えてこういった方々への適切な情報提供や相談・支援体制の充実を図りまして、恒久的な住宅への入居の促進やできる限り故郷に戻って生活していただけるように支援に取り組んでいくこととしております。引き続き皆様のご支援ご協力をお願い申し上げましてご挨拶とさせていただきます。
【プログラム1】「基調講演」-CSRとは-
小川理子 氏(パナソニック 株式会社 CSR・社会文化グループ)
CSRの歴史を振り返ってみたいと思います。欧米と日本では少したどってきた経緯が違います。欧米は1920年代に欧米の協会が武器やたばこ、お酒・ギャンブル...こういったものに関係する企業には投資しないよという、要は社会的責任を考慮して投資をしていくというところからCSRというのが始まっています。
それが1940年代に環境や人権分野でCSRが高まり、50年代、60年代に公害問題が世界的にクローズアップされたり、公民権運動が勃発したりします。70年代に1976年にOECD(経済協力開発機構)が多国籍企業の行動指針を勧告し、80年代には生物多様性の概念が誕生したり、1989年にエクソン社のタンカーから原油が流出する事故をきっかけに、企業倫理の原則が策定されました。
企業倫理の時代を経て1990年代にはソ連が崩壊し、世界がグローバル社会に突入して多国籍企業も巨大化して新興国が台頭していくという変化の中で、1991年日本では経団連の企業行動憲章が制定され、企業のいろんな不祥事だとか問題に対して国際NGOが不買運動を起こしたりした時代でした。
2000年代になってリーマンショック、市場経済の混乱の中で企業がとるべき企業倫理をもう一つ一歩進めて、企業と公共機関がとるべき社会的責任とはどういうものかというものを国際規格としてISO26000が最終的に承認されたということになります。
パナソニックにおけるCSRの原点は、1929年に私たちの創業者、松下幸之助が経営理念を制定し「私たちは企業の本業を通して世界に貢献する。社会の皆様の生活改善に貢献する」としています。29万人従業員がいるのですが、どの国でもどんな仕事に携わっていても、この経営理念だけはしっかりと実践していこうと思っています。
【プログラム2】「事例報告」-企業と地域連携-
武井伸夫 氏(株式会社 パソナ 復興支援担当)
陸前高田市の事業概要についてご説明させていただきます。募集をかけマナー研修、パソコン研修などの座学をやって、その後企業さんとのマッチングをしました。事前に企業さんがどういう人を欲しいかをお聞きして、研修生と結びつけ、フォローアップして最後は直接雇用に結びつけるという事業を行なってまいりました。2011年の11月に単身赴任で岩手に来た時、最初は現地のコネクションがない状況で・・・現地の情報を把握しながらフットワーク軽く動けるような、つないでいただける団体を探しました。
その中でSAVE TAKATAさんとは一番密に連携しました。SAVE TAKATAさんが陸前高田の全体の状況を把握されているとか、外部団体とレンタル事務スペースを確保されているということで、事業企画で密な情報交換をしました。さらに市内の住宅へのポスティングですとか事務スペースを一部お借りするなどして連携を組みました。
「企業連携に期待すること」ですが、まず企業が抱える課題を解決していただけるNPOと連携したいです。やはりアグレッシブなNPOと一緒にやっていきたいです。NPOの皆さんは現地で活動されていますから、持続可能な活動をやるにはNPOの皆さんが現地でリーダーシップを取られるのが一番シンプルかと思います。
瀬川典男 氏(株式会社 川徳 営業企画部)
ちょっと関係ない話から入りますが、大槌というと思い出深い方がいらっしゃって、伊藤陽子さんという方なのですが、大槌で飲食店を経営されていて店も全部流されてしまったという方がある日突然、川徳デパートの案内所に来て、「催事場を貸してくれ、一日いくらするんだ?」とお申し出を急にされたんですね。もう、本当にすごい熱意なんですよ。「無理なら無理でいい、でも写真を見てちょうだい、とにかく見てちょうだい」というので、見ると自分で撮ったA4サイズの200枚くらいの写真をお持ちになって・・・。その熱意に押されてポスター展と一緒に展示をしました。そうしたらテレビ局が取材にきたり新聞にも載りました。そこからあちらこちから写真展を開催したいという声があがったんですね。伊藤さんの熱意がいろんな所を動かした。写真展はドイツでもされたそうです。
例えば、SAVEIWATEさんの復興雑巾、ハートニットプロジェクトなど地元のデパートとして何とかしたいという想いで「手しごと絆フェア」を継続的に開催してきました。何を言いたいのかというとですね、私がお付き合いしているNPOさんというのは本当に狭い範囲で、動いているのはやっぱり熱意・・・おたがい熱くなったときに「やりますか!」「やりましょう!」というような決まり方をしているので、いろんなNPOさんいらっしゃいますが、意外とあたって砕けろとか・・・熱意で人は動く要素が非常に強いんじゃないかなというのが私の限られた活動の中での印象でございます。
森由美 氏(SCSK株式会社 法務・総務・IRグループ CSR推進部)
SCSKはITサービスの会社で、社員は7,500人位、東京が本社で、大阪、名古屋、福岡といういわゆる大都市で大企業向けのシステム開発をしています。今日ご紹介しようと思っているのは、「企業人スキルの提供」です。2012年の10月から12月にかけて社員派遣プログラムとして、3ヶ月間大船渡市と大槌町の仮設住宅支援事業をされているいわてNPO-NETサポート様に派遣させていただきました。
最初は「支援員さん向けパソコン教室の先生をやってくれないか」「研修の企画をやってくれないか」という話から始まりました。しかし実際にお話を伺ってみると、「仮設住宅支援員」として地元の方を雇っているが仮設住宅がなくなったら支援員事業はなくなるので、この方々にこの先の仕事を見つけてあげなければいけない。そのための人材育成事業を構築していきたいんだ。という話をお聞きすることができました。
我々はその考えに非常に共感しました。雇用されうる能力の向上のサポートをするのが活動の目的となりました。雇用は非常に大きな問題だと思いますが、なかなかひとつの企業で現地に雇用をつくっていくことは難しいです。一方で相対する「雇用される側」の能力を高めて色々なところで働けるように・・・そういったサポートであれば出来るだろうということで、お手伝いをさせていただくことになりました。3ヶ月間みっちり、社員が仮設住宅の支援に従事しました。
ポイントは3つだと思います。一つ目のポイントは3ヶ月間のフルコミット。二つ目は、元々あった社内のボランティア休業制度を転用しての運用。元々は青年海外協力隊に行くための制度でした。三つ目は「多岐にわたるスキルを活かす」ことです。パソコンの利用スキルにとどまらずに、企業の中で働くスキル・・・段取り力とか、そういったことをお伝えすることができたのかなと考えています。この三つ目は実際にやってみてわかったことですね。
資料等
開催概要
タイトル | 企業と地域、これからの岩手 |
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日時 | 2013年10月18日(金)13:00 - 17:00 |
会場 | 大槌町 中央公民館 3階 大会議室 (岩手県上閉伊郡大槌町小鎚第32地割126) |
プログラム |
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主催 | 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN) |
共催 | NPO法人 いわて連携復興センター 災害ボランティア活動支援プロジェクト会議 |
協力 | NPO法人 メディアージ |
参加者数 | 56名 |