東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

現地会議

第7回 現地会議 in 福島

避難者の多い地域のひとつである会津地域の現状と被災者自らが活動している事例をお聞きしながら、避難者支援と地域づくりの視点から課題を整理し、その活動のヒントや今後の福島の課題を考えました。
登壇者の主な発言 資料等 開催概要

登壇者の主な発言

【開会あいさつ】

山口巴 氏(NPO法人うつくしまNPOネットワーク)

私は保育園の理事長で、あの日は仕事へ行っているみなさんが戻られれるまで子どもたちを守っていました。何度も続く揺れに、子どもたちは声を上げる事も出来ず震えていました。東京電力福島第一原発が次々に爆発し、避難している人の子どもも面倒を見ました。今もその時の子どもたちの顔を忘れる事ができません。
あの日から2年と半年、地震・津波・原発・風評・風化・消費の「六重苦」である3.11は終わっておらず、支援のニーズ、方法、支援拠点のあり形も変わってきている。被災者の自主的な活動を尊重しながら、今は行政、企業、地域の皆さんの質の高い連携が必要な局面であり、さらなる連携・連帯を強く呼び掛けたいと思います。今日は私もみなさんも何かつかむことができたら...と思います。本日はよろしくお願いいたします。

【テーマ1】「知る」-住民と支援組織の地域課題-

鈴木康 氏(社会福祉法人 会津若松市社会福祉協議会)

発災当時、私が撮った3月12日の写真です。町の様子です。磐越自動車道が使えず、食料品、衣料品、日用品が途絶えました。直後から沿岸部の支援ということで向かいましたが、原発事故があって、阿曽市で13日朝、戻されました。災害ボラセンも立ち上げました。発災後から避難所を閉鎖するまで、支援所の支援物資集積所では、避難所の運営、支援物資の支援と運営、ボランティア募集・派遣・コーディネートが最初の柱になりました。支援物資を募集したところ事務所で身動きが取れないくらい、通路も埋まるくらいの衣類を入れてもらいました。避難所になった総合体育館には職員が張り付きました。中・高・短大の近くの避難所にはボランティアを派遣しました。
3月25日には大熊町が会津若松に移転しました。大熊町の社会福祉協議会に生活支援相談員として応急仮設住宅と借り上げ住宅を訪問する相談員を設置、12か所は会津若松市にあるので、訪問を重ねました。8月から、浪江・双葉・郡山・福島からも多くの避難者が来ました。職員を派遣し、顔の見える関係をつくろうと取り組み情報を集めた。今後の課題は避難者の方が疲れていること。避難しながら支援もしている社協職員も疲れている。私たちの仲間も疲れている。なるべく寄り添えるようにしようと、支援を続けている状態です。

渡辺敏正 氏(楢葉町宮里仮設住宅自治会)

楢葉町は最初はいわきに2週間ほど避難しまして、その次に会津美里町へ避難しました。入った当初は500人ほどでしたが、今は230人ほどです。約半分に減りました。半分の方々はいわきに移っていったが、仮設住宅・借り上げ住宅がなかなか見つからないと聞きます。仮設住宅はAからH棟まであり、それぞれの棟に班長がいて、全体の自治会長・副会長を選びます。私はありがたいことに連絡員の仕事をしながら自治会長の仕事をやらせていただいていますので、仕事をしながら挨拶して回って、だんたんと皆さんからも挨拶をいただけるようになり、良い関係を築いてこられました。しかしお年寄りが増えてきたので、訪問はなかなか大変で、社協さんが家を一軒一軒回ってくれています。私は自治会と連絡員をやりながら団体を回る。社協さんが年配の人を回っている。孤独死のようなことはまだない状況です。私は周りから助けられながら運営している状況です。

安達忍 氏(会津美里町町民活動支援センター準備室 サポートみさと)

震災時は災害時協定を結んでいたのでそれから現在まで活動をしています。今、渡辺さんからお話があったように、自治会もしっかりしているし、楢葉町の役場も移転してきているのでうまくまとまれています。会津若松市には12か所、ちらばって仮設がありますが、会津美里町は1か所だけです。広報誌を月に1回だします。役場でも広報誌を出していますが、内容は報告が中心です。私たちはできるだけ告知をして、会津美里町のイベントにも参加していただけたらと活動している。夏祭りは、自治会が中心になって企画するのをサポートしています。自分たちで何とかしよう、というのを妨げない後方支援をしていこうと考えている。これからも続く避難者支援、地元と溶け込めるような仕組みづくりをサポートしていかないといけないと考えています。

【テーマ2】「学ぶ」-福島の課題と支援のヒント-

稲村久美 氏(株式会社 まちづくり会津)

「あいづひまわりプロジェクト」を2011年3月から始めました。実行委員やメンバは主婦を中心に、ひまわりが放射能を除去するかもしれないということで「とりあえず種まいてみっぺ」ということで始まりました。結果はかなり厳しいものでした。このまま続けていいのか悩みましたが「笑顔をつくっていくことを続けていこう」と決めました。資金もなく、家事もやらなければならなかったけど、行動力だけはあったんです。1年目はひまわりを植えました。なかなか休耕地がある中、貸してくれませんでしたが会津坂下の団体が受け入れてくれました。2年目もまたひまわり蒔きました。心の問題に取り組むため、心のケアの講習を受けたり仮設住宅を回ったりしました。3年目はほうき草のタネを蒔きました。最初はOKしてくださったが、生活が安定してくると、他に自分たちもやりたいことがあるようで、残念ながら失敗してしまいました。それは皆さんが元気になった証拠だと思っています。

蛭川靖弘 氏(NPO法人 まちづくり喜多方)

喜多方は蔵も多く、農業も盛んで、ラーメンが皆好きです。一番の課題は人口減少だと考えています。20代の階層が人口の7.8%、4,400人しかいない。全国的にそうだと思うが進学や就職で地元を出てしまってその後は帰って来づらいんだと思う。帰ってこないので子どもは地元で産まれないという状況で、年間約2%ずつ人口が減っていて、50年先には半分くらいになってしまうかもしれないと心配しています。そんな中で震災がありました。今は「生きる・つなぐ・学ぶ・継承する」というテーマで活動しています。震災当日はラジオ局にいました。震度5弱でしたが真っ先に警察と消防に電話しました。緊急放送を流して、自分で車を運転して町を回りました。その後、被災した子どもたちの支援で喜多方ラーメンの炊き出しなどをしました。今、力を入れたのが除染でした。国が示した0.2μシーベルト以下、という基準に沿って、基準以下のところは市は除染しないと言いました。震災直後から京都から除染の研究をしている先生がいるということで、実証実験に協力しました。国が行っている除染と違って地域住民ができる除染を「自力除染」と名付け、福島市で勉強会をしました。電力の固定価格買取制度ができたので、自前で太陽光発電つくって、電気を売って収入にしていければと今建設中です。12月に完成予定です。200KWだと、700万~800万の収入になる。半分は銀行への返済になるが、残りの半分を自由な予算にして、これから19年続けようと思っています。

尾崎嘉洋 氏(NPO法人 苧麻倶楽部)

奥会津・昭和村は山の中にある集落が10件あって一つの村です。人口は1403人、高齢化率は54.5%。典型的な超少子高齢化です。ミッションは、過疎化、経済価値に重きを置いたことで失った自身を取り戻すことをしています。地域の継承する担い手を持続させ、地域に根差した生き方をしたい人もふえています。地域に大切なコミュニティや文化を継承しておこうと私たちは思っています。震災前に戻ることは難しいです。どこへ向かえばいいかわからないが、多様な思いをつなげる場づくりとか、地に足のついた取り組みが大事です。実践として2007年からワークキャンプを行っています。震災後に海外から3名ボランティアが来ました。ポーランドから8歳の時チェルノブイリ経験した人、アメリカ先住民族の方とかです。メキシコ、イタリア、イギリス、台湾などからも村に来ています。
風評被害はあるけれども、顔が見えるひとり一人が発信役になることが大事だとおもっています。震災があって、観光として福島に来る人は少ないですが、今だからこそみんな学ぶチャンスだぞ、と言いたいです。今70代の方々がから教われるのも、今しかない。現場にかかるストレスとして、支援する・支援されるという関係には限界があると思っています。ともに未来をつくる、仲間として、どうやって共感を作っていくかが大事だと思います。

資料等

開催概要

タイトル 会津から見える福島の課題
日時 2013年09月13日(金)13:30 - 17:30
会場 会津大学 講義棟2階 中講義室「M2」
(福島県会津若松市一箕町大字鶴賀上居合90)
プログラム
【開会あいさつ】
栗田暢之(JCN)
山口巴 氏(NPO法人 うつくしまNPOネットワーク)
【テーマ1】「知る」-住民と支援組織の地域課題-
[スピーカー]鈴木康 氏(社会福祉法人 会津若松市社会福祉協議会)
蛭川靖弘 氏(NPO法人 まちづくり喜多方)
稲村久美 氏(株式会社 まちづくり会津)
【テーマ2】「学ぶ」-福島の課題と支援のヒント-
[パネリスト]
蛭川靖弘 氏(NPO法人 まちづくり喜多方)
菅野雅弘 氏(葛尾村 総務課 復興対策係)
尾崎嘉洋 氏(NPO法人 苧麻倶楽部)
[コーディネーター]
栗田暢之(JCN)
【テーマ3】「つながる」-参加者を交えた意見交換・情報交換-
[ファシリテーター]
徳田太郎 氏(NPO法人 日本ファシリテーション協会)
主催 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)
共催 NPO法人 うつくしまNPOネットワーク
一般社団法人 ふくしま連携復興センター
災害ボランティア活動支援プロジェクト会議
協力 NPO法人 日本ファシリテーション協会
認定NPO法人 国際協力NGOセンター(JANIC)
NPO法人 メディアージ
社会福祉法人 福島県社会福祉協議会
参加者数 101名