東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

現地会議

第7回 現地会議 in 宮城

復興支援活動は「地域づくり」や「まちづくり」といった中長期的な地域資源づくりの段階に移行しています。今回は地域づくりに取り組むステークホルダーをお呼びし、これから直面する状況や課題、またそれを乗り越えるための、知恵や経験を学びました。
登壇者の主な発言 資料等 開催概要

登壇者の主な発言

【開会あいさつ】

阿部憲子 さん(南三陸ホテル観洋)

南三陸町の被害は甚大で、直後より人口の流出が深刻だと感じていましたが、実際、人口の流出は歯止めが効かない状態です。事業者も約7割が廃業となり、非常に残念で厳しい環境です。この震災によって残念ながら地域がバラバラになってしまったが、このような会議をきっかけで再構築されることもあります。
このホテルでは、住民の方たちと一緒に避難所の運営を行い、皆さんの思いなど聞いてきました。点在するお店を紹介する「南三陸点店(てんてん)マップ」も商店のみなさんと一緒に作りました。私達も具体的に行動しようと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。

【テーマ1】「知る」-復興の場所づくり-

小野寺寛 氏(すばらしい歌津をつくる協議会)

「すばらしい歌津をつくる協議会」は震災前からあった団体で、終戦後の復興をきっかけに、生活改善、地域を住みやすくしようという運動からはじまったと言われる。震災以前は、津波があれば山の者が海の者を助けよう、土砂崩れがあれば海の者が山の者を助けよう、そんな申し合わせもしていた。発災後は、月2回の会合を開き、それを会報にして避難所や各家庭に配ったり、地域住民からの文章を募って新しいまちづくりの作文集「未来の遺言」を発行したり、仮設の集会所での手作り品を販売したり、外部団体や大学生ボランティアなどを受け入れながら地元地域づくり団体として活動をしてきた。
地域づくりをするということは、「地域の歴史」をきちんと知り、学び、継承するということである。南三陸町は、昔から地元住民が外からの人たちと共に、地域、文化、産業をつくってきた歴史がある。今回も地元だけではなんとも太刀打ちができず、町外の方の力を借りる必要性があり、いまその作業が始まったばかり。東北の被災地では今後これまで以上のご支援が必要とされている。

渡部慶太 氏(NPO法人 石巻復興支援ネットワーク)

石巻復興ネットワークは、地元のお母さん方と外から来た支援者で震災後5月に立ち上がった組織。今取り組んでいる「石巻に恋しちゃった」(以下、石恋)は、「オンパク・みちくさ小道」という手法を用い、単発では終わらない継続しやすい事業手法。
第1回目の石恋は約500名の方に参加していただき、ベーグルづくりを起業する後押しになったり、「子育て支援ネットワーク会議」の発足のきっかけにもなったりした。評価アンケートによる満足度は98%と非常に高かった。第2回目は今年の8月に開催し、参加者は約1,500人に増えた。
私たちは、この手法を採用することで、地域に住む人たちが自分たちで問題を解決し、地元の人同士で支え合うことができる地域をつくれることを目指している。 復興は市民一人ひとりが取り組まなくてはいけない。それには、支え合いや思いやりが必要で、これからの石巻を考える上での社会基盤の一つとしてこの「石巻に恋しちゃった」のような手法は有効だと考えている。

【テーマ2】「学ぶ」-全国の場所づくり-

宮定章 氏(NPO法人 まち・コミュニケーション)

阪神淡路大震災から18年、神戸市長田区において住民の方と共に地域づくりをしてきた。発災後、行政主体のまちづくり協議会の事務局に携わり、行政情報や他地域の情報を住民に伝えてきたが、10年後、住民感情の調整ができず、協議会は解散した。長田区は、人口は約8割まで回復しているが、元々住んでいた方の帰還率は約3割。
今回の東日本大震災においては、石巻市で活動している。石巻市は震災以前に産業構造の変化に伴う人口流出があり、それを乗り越えたと伺っている。過去の歴史から学びながら今後も活動を続けたいと考えている。

渡辺裕伸 氏(農事組合法人ファーム田麦山)

田麦山は、新潟県長岡市にある人口500人程度の農村地域。中越地震では農地を含め、地域の9割が被災した。
地震後、改めて感じたことは、本来一番ダメージを受けた人は、山の中を便利にするように一生懸命頑張ってきた自分達の親の世代。地域の歴史を振り返り、自分達の世代が何をすべきか、田麦山をどうしようかと避難生活をしながら考えた。これから未来を築いていく子どもが元気でなければと思った。老いも若きも男も女もみんなで子どもたちを教育していこう、その姿を取り戻すのが田麦山の復興、田麦山らしさではないのかと感じた。
それで農事組合法人ファーム田麦山を立ち上げた。
地震による被災による復興と従来型の農業からの脱却。地震がなかったら農事組合法人はできなかった。ピンチをチャンスに変えようと。「元気があればなんでもできる」。支援してくれる人たちといっしょにやろうということに。
あくまでも我々が主体。主体の中で外部団体の方々から知識をもらってなんか起こす、それを実行する。最初は何もできずそれを知らせて第三者の力を借りる。確立したら今度は自分たちでやる。今では、小さなコンサートをやったりとか雪まつりをしたりとか、他団体とのコラボレーションとかしている。
過疎化と少子高齢化はいまだに続いている。先人たちから学び、地域をもっと知る。今までの生活習慣を尊重する。それによってヒントが得られるかもしれない。何よりも長続きしなくてはいけないので、自分たちが楽しむことが大事。今までのものに自分たちが何をやるのかということを融合することが長続きする秘訣。ピンチをチャンスに変える。これが私のプロセス。

資料等

開催概要

タイトル 人が集まり、つながり、元気になる地域づくり
日時 2013年08月23日(金)12:00 - 16:00
会場 南三陸ホテル観洋 多目的ホール「クイーンエリザベス」
(宮城県本吉郡南三陸町黒崎99-17)
プログラム
【開会あいさつ】
阿部憲子 氏(南三陸ホテル観洋)
【テーマ1】「知る」-復興の場所づくり-
[スピーカー]
小野寺寛 氏(すばらしい歌津をつくる協議会)
渡部慶太 氏(NPO法人 石巻復興支援ネットワーク 事務局)
【テーマ2】「学ぶ」-全国の場所づくり-
[パネリスト]
宮定章 氏(NPO法人 まち・コミュニケーション)
渡辺裕伸 氏(農事組合法人 ファーム田麦山)
テーマ1のスピーカー
[コーディネーター]
栗田暢之(JCN)
【テーマ3】「つながる」-場所づくりのグループディスカション-
[ファシリテーター]
NPO法人 日本ファシリテーション協会
主催 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)
共催 みやぎ連携復興センター
災害ボランティア活動支援プロジェクト会議
協力 NPO法人日本ファシリテーション協会
NPO法人 メディアージ
参加者数 101名