東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

現地会議

第6回 現地会議 in 福島

福島県での6回目の現地会議は、「次の一歩を考える」をテーマに、地震・津波・原発事故・風評被害など複合的な被災に向き合う支援の現状と、被災者自らが活動している事例をお聞きしながら、福島復興の担い手の強化を探ることを目的に開催しました。
登壇者の主な発言 資料等 開催概要

登壇者の主な発言

【開会あいさつ】

山崎美貴子(JCN)

南相馬の現地の中で色々な活動をしながら思っている事、怒っている事、前に進まず辛いかた、道が見えないと思っているかた、色々な思いが渦巻いている。そうしたことを私たちは共有して、一歩でも二歩でも前につなげていける、険しい道を歩み続けようという思いを、今日は一つにしようと思う。
参加者にはNPO/NGO/ボランティア、支援をしている人を支援するかた、あるいは住民の方、今日は接着剤の役割を果たしているかたもいらっしゃる、渦中の中で色々探ってらっしゃるかたもいらっしゃる。そうした声を、今日は知り、そして学び、そしてつながりあう、その道を進みたい。一歩でも二歩でも、私たちが歩める道を探るひと時になったらと思っています。

【テーマ1】「知る」-復興の担い手の声-

近藤能之氏(走れ南相馬)

小さな任意団体として活動してきた。本業は保育園の園長をしている。子育てをしている家庭の親の声を聞き、その交渉人のような事をやってきた。まず子どもを持つ親には、避難するか、現地で生きるか、いろんな選択肢がある。そこに、背中を押して欲しいのかどうかというのもあるが、最終的には「自分で決めなさい」と私は言っている。前向きで生きる環境を作り出すことをテーマに動いてきた。
南相馬ではいまだに除染が進んでいない。宅地の除染も予定では完了しているはずだが、始まっていない。保育園が除染をするとは何事か、という意見も多いが、ここに住んでいる家族のためにやっている。乳幼児宅の除染のサポートをしてきた。23軒の除染を実施。
安心感を創り出す活動をしているが、安心感は見えない。自分が動くことで、安心感になっている。お母さん会議、お父さん会議をプロデュースしてきた。別々に。対話の場として。自分たちはどう動かなくては行けないのか、どう安心感を見出すのかを話している。
子どもを外で遊ばせられないのは、子どもにとっても大人にとってもストレスとなる。大人同士のコミュニケーションはかれるところも必要。団体、市、NPOを繋げながら実現化を図ってきた。
水が南相馬は危険だと言われることがある。「そんなことないよ」と日本全国の方から応援していただいて、『じゃぶじゃぶ池』という安心して遊べる水場を作っている。「水はすごく危ない」と言われる事もあり、安心して水遊びできる所を作りたかった。避難した人と地元に残った人で温度差があるという現実がある。自分が起こしたアクションはどちらも正しいと思いたい。
南相馬に戻りたいと思った人にも、戻ってみたら前よりもよい南相馬になっているように...と活動している。ぜひ足を運び、こういう動きがあるのだ、と広く発信していただきたい。

原澤慶太郎氏(南相馬市立総合病院 内科)

ご存知の通り、南相馬市では原子力災害があり、その後も色々な事が起きた。放射線が原因で病気になったというよりも、生活習慣病が増えている。糖尿病、高血圧、高脂血症など。もう一つは補償の問題で、道一本隔てたコミュニティの崩壊が起きている。それが私たちの関わっている問題。だからと言って放射能が関係ないという話ではない。
皆さんに知っていただきたいのは、放射線では今すぐに死なない。私の患者は糖尿病や脳梗塞、うつで亡くなっている。そういったものにきちんと対応しなければ、命を落とす。当たり前のことだが、放射能の事はとても気になるので、他の病気に注意がおろそかになっている印象が否めない。啓蒙を引き続きしなければならない。
原子力災害の後は、コミュニティが高齢化する。その時に起こる様々な事態に、きちんと対応しないといけない。在宅医療を去年作って、町の中で往診している。その名の通り、家まで行って、薬も出せば往診もする。特に家族の介護がない南相馬では、通院できない患者は多い。必要な医療。内訳は癌の人がすごく多い。癌の終末期が半分を超える。高齢化医療の特徴。人間が最後なくなる時は、癌か脳梗塞か肺炎。できれば家で死にたいという人は多いが、それは非常に大変。
南相馬に足りないものは、「チーム」。仲良い人とのお付き合いだけではなく、問題解決能力を備えたプロ集団。外から連れてきてもいい。一番必要なのは「この町を何とかしたい」というパッションだと思う。これがあればチームは出来る。その上で、お互いの弱点を補い合い、しかも意見の衝突を恐れず組めるかにかかっている。
南相馬にメンバーはそろっている。強い思いを持った人もたくさんいる。足りないのは「チーム」だと思う。問題解決に特化したチームを作る事が出来れば、南相馬は今後も発展できる。

【テーマ2】「学ぶ」-次の一歩を考える-

後藤麻理子氏(NPO法人 日本ボランティアコーディネーター協会)

生活支援相談員の研修支援として具体的な実演など3日研修を5回行いました。生活支援相談員ハンドブックもつくりました。今年3月に配布した。理由は3つ。

  1. 新任の相談員の方の基礎的な勉強のため
  2. 生活支援相談員の存在を知ってもらう
  3. 既に活動をしている良い事例を紹介する
平常はそれぞれの市町村だったのが横断的に情報交換できるようになった。社協とNPOが話せるようになった。読んだ相談員からは「私の知りたいことが書いてある」と喜んでもらえた。
生活支援相談員は様々なニーズをキャッチする。直接話しながらその方の問題をききだす。出向いて行くのが特徴。第3者であることもポイント、話しやすい。住民の力を引き出す役。不安の1位が、先が見えないこと。前年より増えているのがショックだった。暮らしている人のニーズが家族で別々の問題を複合的に抱えている。相談員が潰れてしまう心配もあった。具体的につなぐのはサポートする人と繋ぐ人を兼任している人材が多い。ハンドブックはで向いて行こうとJVCAでは考えている。

吉田恵美子氏(いわきおてんとSUN企業組合)

避難所への炊き出しなどで農業者のかたたちと一緒に活動することが多かった。「この先どうやって農業をしていくのか」という不安に、私たちにできる事がないかと考えていた。いわきで綿花の有機栽培がそのひとつ。「いわきオーガニックプロジェクト」として始めた活動は、今年から「ふくしまオーガニックプロジェクト」となった。ほかに発電やスタディツアーもしている。
その3つがタッグを組んで「いわきおてんとSUNプロジェクト」を始めた。もともとそれぞれが専門分野を持って、震災前は重なる事がなかったメンバーが、震災後の復興をさらに前に進めるためにつながった。より責任ある活動ということで企業組合という形にした。
このプロジェクトにはいわきの仮設住宅にお住まいのかたも関わっている。楢葉の米作りの方も関わっている。農家のおばちゃんたちと仮設のお母さんが一緒に作業していることで地域のコミュニティが少しずつつながっていく。こういうきっかけを与えてくださったのは外部の方々。都内のJKSKという、被災地の女性と、首都圏の力ある女生とがつながるネットワーク。ここ南相馬でも、「南相馬復興大学」を通してつながって、栽培が始まっている。

菅野孝明氏(浪江町 ふるさと再生課)

浪江町役場、ふるさと再生課・津波被災地対策係で復興支援専門員として働いている。浪江の復興計画第一次は昨年の10月に策定されました。103名の町民を含めた策定委員会によって手造りでつくられました。
4月に区域の見直しがあり、避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域に再編。面積比でいうと帰還困難区域が7、他が1.5ずつ。帰還困難区域に5,000人。他に8,000人ずつ、全部で21,000人が元々いた人口。JR常磐線の駅のあたりに居住エリアを作り、そこを拡散していこう、というのが全体のイメージ。私が支援しているのは津波被災地の復興。
津波被災地の計画は600世帯600ヘクタール。帰還の意思についてアンケートをとった。戻るとおっしゃっている方が4分の1、わからないという方が3割。もう戻らないという方が4割。600世帯のうち、100世帯はすでに自立再建している人。わからないという人は、先が見えない事、原発への不安と不信、インフラ復旧への不安、仕事の都合が主だった理由。
私の実際の活動は抽象的だが、状況を把握すること、ハード整備の専門技術を活かすこと、住民対話に関わることにある。
でもそういった活動をする前に、地域内部の支援が非常に重要だという事に気づいた。求められている支援は何かは行ってみないとわからない。これまでもどんな人がどんな事をやっているのかを見ながらやってきた。計画は作ったけどどうやって実際に進めていいのかわからない、というのが現場の状況。それを可視化できるものを作りながら、まずは役場の中で対話をしながら、場づくり、話すタイミングを大切にしながら進めている。必要な事は助言する。提案をしていく。
いきなり変われと行っても変われない。現状を認めて、大事なのは役割分担の中で、「これ作りました。使ってください」ではなく、「一緒に考えましょう」と。あと、作り過ぎないこと。みんなで議論して一緒につくる、という事を大事にしている。間違いもある。お互いに許す気持ちを持つことが大事。「役場内部の支援」をメインにやっている。これから住民の方と対話していくにあたっても、同じような視点と感じている。

資料等

開催概要

タイトル 復興の担い手と共に次の一歩を考える
日時 2013年06月21日(金)13:30 - 17:00
会場 南相馬市民文化会館 ゆめはっと 多目的ホール
(福島県南相馬市原町区本町2丁目28-1)
プログラム
【テーマ1】「知る」-復興の担い手の声-
[スピーカー]
近藤能之 氏(走れ南相馬)
原澤慶太郎 氏(南相馬市立総合病院)
田村早人 氏(社会福祉法人 南相馬市社会福祉協議会)
【テーマ2】「学ぶ」-次の一歩を考える-
[パネリスト]
後藤麻理子 氏(NPO法人 日本ボランティアコーディネーター協会)
吉田恵美子 氏(いわきおてんとSUN企業組合)
菅野孝明 氏(浪江町 ふるさと再生課)
[コーディネーター]
栗田暢之(JCN)
【テーマ3】「つながる」
[進行]
尾上昌毅 氏(NPO法人 日本ファシリテーション協会)
主催 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)
共催 一般社団法人 ふくしま連携復興センター
NPO法人 うつくしまNPOネットワーク
災害ボランティア活動支援プロジェクト会議
協力 NPO法人 日本ファシリテーション協会
認定NPO法人 国際協力NGOセンター
NPO法人 メディアージ
社会福祉法人 福島県社会福祉協議会
参加者数 74名