東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

現地会議

第6回 現地会議 in 宮城

「3年目の支援」をテーマに、被災地の中から立ち上がった支援者と県外から支援に入った支援者とのディスカッションを中心に「3年目に必要となる支援、連携、協働のあり方」を参加者全員で探ることを目的に開催しました。
要約 資料等 開催概要

要約

【開会あいさつ】

開会冒頭に、主催団体、共催団体、会議開催地地元団体よりご挨拶および情報提供を頂きました。

田尻佳史(JCN)

今後はNPO同士、NPOと企業、NPOと行政など他セクター同士の連携・関係性が益々重要になってくると考えられる。また、NPOのように主体・自発的な活動を、震災をきっかけに開始した人たちと、これまで地域で長年活動し続けてきた自治組織との新たな関係性を紡いでいくことが5年、10年先にもつづく繋がりとなり、主体的な復興に向かっていく民の力となると思われる。JCNも皆さんと一緒に3年目、4年目を迎えていきたいと願っている。

桑原英文 氏(災害ボランティア活動支援プロジェクト会議)

これからは「外部」と「地元・現地」といった関係性を越え、同じ問題に取り組む支援仲間として受け入れて頂けるとありがたい。3年目を考える前に、自分たちをふくめ、これまでの自分たちの支援を今一度振り返り、支援を被災地・被災者へ押しつけていなかったか、目の前の支援にとらわれ支援依存をうんでいなかったか、民業を圧迫していなかったか、手段が目的になっていなかったかなどを問い直す必要がある。
支援Pとは、企業、NPO、社会福祉協議会、共同募金会等により構成されるネットワーク組織。2004年の新潟中越地震の後、支援の検証を行い、2005年1月より中央共同募金会に設置された。2012年4月からは支援Pみやぎチームとして側面的な支援活動に取り組んでいる。
支援Pが目指していることは、1人ひとりの生活再建であり「そこに暮らし、日常を過ごしてきた住民であり、歴史を積み重ねてきた地域」が主体であることを忘れないことが大切。3年目に必要になってくることは、

  1. 安心・安全・安住の暮らしに向け、個人地域の自立的な復興を成し遂げていくこと
  2. 復興に向けて住民の皆さん地元のあらゆる関係者と共に見いだし産み出していくこと
  3. 災害に強い"もう一つの社会"を目指すこと
だと考えている。また、「住む・費やす・働く・育てる・学ぶ・交流する・癒す・遊ぶ」といったブータンなどで使われている「幸せの指標」のどこに自分たちが支援活動をしているのかを考えることも今後の支援を考えるうえで有効だと思われる。
3年目の支援の大項目としては、仮設住宅からの移転に伴う生活支援・生活再建支援、地域・県域・東北などでの関係性を回復していく支援、復興のまちづくり計画等への住民参加の支援、失ってしまった雇用の場の再建・新たな起業支援+商業・生業が成り立つ支援、放射線被ばくから住民の健康を守る支援、県外避難者の定住・再定住・帰郷への支援、災害にも強い地域づくりに向けた取組みの支援、制度・法令の制定、改訂、柔軟な運用への関わりとその支援などが挙げられる。

阿部由紀 氏(社会福祉法人 石巻市社会福祉協議会)

3年目を考えるにあたり、1年目に(石巻専修大学で)災害ボランティアセンターをスタートした時のことを振り返り「何のためにやってきたのか」という自分たちの原点に立ち返るようにしている。そして石巻社会福祉協議会として何をしていくべきかという答えが、今回配布している資料の内容になっている。石巻市社会福祉協議会が今後地域福祉をしていく上で、地域住民が自分の地域を継続的に力づける、地域力を高めていかなければならない。当初、石巻社会福祉協議会は災害ボランティアセンターを運営するためにあったのではなく、その後の地域福祉を見据えて展開してきた。震災の4年ほど前から石巻市と社会福祉協議会とで災害ボランティアセンターを石巻専修大学に設置すべく協議していた。
石巻は、中心部がよく取り上げられるが、雄勝、牡鹿、北上や河北、河南、桃生などの農村地域もあり、商工観光農林水産すべての業がある地域。よって、各地域に適した支援が必要とされている。
これまでは保健師、栄養士、看護師、地域医療が別々に動いてきており、連携の必要性は唱えられるも、保険、医療、福祉が本気になって連携することはなかった。例えば、地域包括サポートセンターは65才以上の高齢者を介護支援を担当しているが、在宅介護支援センターは65歳以上で介護度の高い人たちを支援しているが64才の人で支援が必要な人への支援がなく誰かが繋げる必要がると考えている。
そこで、3年目をむかえる石巻市社会福祉協議会では「地域福祉コーディネーター」という"地域をつなげる人"を10名養成し、石巻を10地区に分け支援していく計画。この事業は2013年4月から動き出す予定で、例えば、仮設後のコミュニティ形成(仮設住民が新しい地域になじんでいく支援、被災者を受け入れる地域住民への支援)の際に様々な社会資源を繋ぎ、横の連携をつくっていく役割を担っていきたい。もし社協が既存制度のグレーゾーンを埋める役割を担わせて頂けるのであれば、さらに社協もケアできないグレーゾーンをフットワークの軽く決裁の早い皆さまに埋めて頂けるとありがたい。
今回の(地域福祉コーディネーターの)提案は、市役所は移動がある、社会福祉協議会は福祉のことしかしていないという現状をふまえ、地域福祉コーディネーターはその調整役として、石巻全域で広く社会資源を繋いでいくことが狙い。
地域福祉コーディネーターは20代、30代を中心に雇い、その人たちが30才、40才になった時に、いま話していることをどれだけ実現できているかが評価の指標となると思っている。皆さんにはわたしたちにノウハウを提供して頂き、地元のNPO団体や地域福祉コーディネーターも支えて欲しい。社会福祉協議会の限界が被災地支援の限界ではあってはならないので、地元の方々の気持ちや自立を理解して頂きながら、今後もご協力頂きたい。

【テーマ1】「知る」-被災者・被災地の視点を知る-

テーマ1では、被災住民として、地元支援組織として、3年目の被災地に必要と思われる支援や地域外支援者の関わり方、地元への引き継ぎ方を語って頂きました。

塚本卓 氏(気仙沼プラス)

被災直後、気仙沼にも大量の物資が届き、多くの炊き出しが行われ避難所は大混乱した。大きな避難所には支援が大量に入り、小さなところには全く入らないという「支援格差」も起こった。そこで「誰が、どこで、何をやっているか」を整理し支援格差の軽減、支援漏れがでないよう、外部支援者と一緒に情報交換の場をつくり、お互いに調整していこうという動きができた。
2011年6月には気仙沼市対して「NPO・NGOでお手伝いできること」を支援団体の連名で提言。それを受けて市長および関係各者が集まり「今後、気仙沼に必要な支援・協働」について話し合った。結果、気仙沼NPO・NGO連絡会、唐桑ボランティア団、もとよしボランティア連絡会という行政、社協、支援者団体が毎週集まる場ができ、今でも継続している。
これらの連絡会は緩やかな連携の場で、地域毎に顔のみえる関係をつくり、具体的な問題を共有し、「しなければならない」という指示型ではなく「したほうがよい」という建設的アドバイスをお互いに提供し合いながら各地域に適した支援を展開していく場となっていった。更に行政主導でテーマごとに分科会を設け、支援団体と一緒に課題解決に取り組んでいる。(仮設住宅分科会、まちづくり分科会、しごと分科会、こども分科会、歴史・文化分科会、地域別支援者ミーティング)
これらの連携のお蔭で、震災後に発足した組織の底上げ、内外組織との繋がり強化、制度の交通整理、市長との懇談会開催、公営住宅検討会への要望吸い上げなどに繋がっている。また、最近では、気仙沼を対外的にアピールするために行政、企業、市民団体の参加のもと、気仙沼市が座長となり「観光戦略会議」というものが開催されている。
3年目を迎えての問題点は、外部支援団体の減少、地元の人材不足、情報の伝達不足、仮設~公営住宅への支援、住民不在のまちづくりが挙げられる。これらの問題を解決するため、今後は住民が主体となる、市民活動のためのネットワークづくりが大切だと考える。
最後に、このたび地元の人間を中心に「気仙沼プラス」という中間支援機能を有する団体を立ち上げた。当面の活動内容としては、

  1. まちづくり支援
  2. 連絡会運営
  3. 情報の集約・発信
の三本柱。これからは外部、内部関係なく、すべての団体が協力し合い復興に取り組む必要がある。

山崎信哉 氏(石巻仮設住宅自治連合推進会)

当初、自治連合会は自治会同士の情報共有を目的にはじまった。石巻の全134団地中、自治会があるのは38団地、連合会に加盟しているのは内36団体。仮設団地で様々な価値観、生活観を持つ人たちが抽選というかたちで入ってきているのでコミュニティ形成は困難であり、ルールは必要最低限とした。自治会の主な活動目的は、

  1. 孤独死をださないためのコミュニティづくり
  2. 安心・安全で明るく住みよい環境づくり
  3. 自治会、自治連合会の体制づくり
と考えている。
また、警察、市役所、社協、NPO・NGOに来て頂き、以下の会議を開いている。
  1. 定例会の開催(毎月1回の定例会および支部会議、仮設住宅自治会間の情報共有)
  2. 行政や関係機関・支援者との連携調整、情報の伝達、要望書の提出
  3. 仮設住宅の生活環境改善に向けた取り組み(駐車禁止や交通標識の取り付け)
  4. コミュニティ形成支援(親睦行事、スポーツ大会や歌合戦など)
  5. 全仮設住宅団地への訪問調査(自治会の設立状況をはじめとする基礎調査)
  6. その他(パソコン教室、企業・NPOとの協働)など
ありがたかった支援は、衣・食の支援、自治会で出来ないイベント、支援情報や公営住宅情報の提供、住民の技能を生かした企画、資金の助成、社協の見守り、警察による防犯パトロール、土台の支援など。疑問に感じた支援は、いつまでも物資を配る、集会所の予約を頼まれる、チラシ貼ってはがさない、集会所の扉に案内を接着するなど。
これからの取組みとしては「人とモノを失っても、心を失わない」自立心の醸成がもっとも重要。もし支援をして頂けるのであれば、住民だけではできない部分を補って頂きたく、例えば、お笑い、音楽、伝統芸能等イベントの開催など住民のやる気を引き出し、活力を取り戻すきっかけづくりや、公営住宅入居や集団移転等に関する情報など生活再建に関する情報の伝達・提供、まちづくり等の専門スキルやノウハウの提供など専門的な分野のサポートをお願いしたい。心から支えて頂き感謝している。

馬場照子 氏(NPO法人 亘理いちごっこ)

亘理いちごっこは2011年5月に立ち上がったお母さんたちで頑張っている団体。大きな家族のようなコミュニティづくりを目指している。
当初は町内会集会所を借りて地域内外の方たちへ温かくバランスのとれた食事を提供。その後、お母さんたちの要望で子ども達の学習支援の場、寺小屋を仮設住宅の集会所でスタートし、みなし仮設、自宅避難住民の方向けにコミュニティカフェ・食堂でもはじめる。また、お話聞き隊という取組みも仮設住宅を中心におこなっており、2012年夏から亘理町社会福祉協議会が仮設の見守りをしてくれるようになったので、いちごっこはみなし仮設に注力することになる。みなし仮設に住んでいる方を訪問すると「いま涙」という状況。この様な人たちに関しては行政の制度では手が届かない部分だと思うので、まだまだ話を聞いていかないといけないと思っている。
その他、地域経済の活性化のために手仕事商品づくり・グッズ販売もおこなっている。地域住民だけではなく、全国から被災地を応援しようと集まる交流イベント「わたり Home Coming Day」を年3回開催。地域のお店で使えるチケットをつくり「ありがとうチケット」(42店舗で使える)、被災地という冠がなくなった時も通用するチケット、商品、団体にしていきたい。3年目の被災地/亘理いちごっこの課題としては、

  1. 助成金等に頼らない団体にしていく
  2. 個々に活動する団体同士が繋がり地域全体を応援してもらう動きをつくる
  3. 被災地全域を底上げ
具体的には、コミュニティ・ビジネスの立ち上げ(罹災者・障害者・社会参加困難者・非罹災者、地域住民誰でも参加できる就労スペースの創出)、地域における緩やかな協働プロジェクト実行委員会・交流の場づくり、個々の発信から地域全体の発信をして全体の底上げをしていかなくてはならないと思う。2014年3月に仙台市で被災地版 「Home Coming Day」を行いたいので、ご興味のある方は実行委員会にご参加ください。

【テーマ2】「考える」-必要な支援を共に考える -

テーマ2では、後方支援組織としての、3年目の被災地に必要と思われる支援や地域外支援者の関わり方、地元への引き継ぎ方を語っていただきました。

白鳥孝太 氏(公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会)

塚本さんとこの2年間、二人三脚で歩んできた。これまで、支援者、支援のプロなどと言われたこともあったが、実際は常に悩みながら壁にぶつかりながら活動してきた。塚本さんが言及された被災地の抱える問題の中に「人材不足」というものがあったが、決して地元の人材不足ではなく、外から来ている支援団体を含めこの様な経験を克服してきた人はないので、皆で共に乗り越えていくべき経験なのではないかと感じている。一緒に考えながら「悩んでいけるか」が、この局面を越える鍵だと思っている。人材も含め、無いものを探すよりは、地域にあるものをもう一度見直し「自分たちでやるんだ」と気を強く持ってもらいたい。また、外部支援者はどう寄り添えるかという立ち位置を明示して関わっていくことが必要だと思う。

中川政治 氏(一般社団法人 みらいサポート石巻)

石巻仮設住宅自治連合推進会の中の一団体として山崎会長の石巻仮設住宅自治連合会を支えている。発災当初、石巻専修大学のボランティアセンターでNPOの連絡会を開催していた時にスタートし、地元の方と外部支援者が一緒に事務局機能を担ってきた。登録数は334団体(一回でも参加してくれていた団体を含む)。3年目のことを考える前に、まず1年目のボランティア数の推移をグラフでみてみると、グラフの通り、ガレキや物資配布のボランティア数はGWをピークに徐々に減り続け、今でも残っているのは仮設住宅への支援の部分が大半で、この仮設支援をしている人たちが2013年にどう動いていくかが今回の話に繋がると考えている。
これまで仮設の支援に入っている方の連絡会を計53回おこなっており、そこで自治連合会や社会福祉協議会と一緒にどういった支援を展開していくべきかを話し合っている。そこで「仮設住宅団地での活動に関するご案内」という形で、住民が主体的に活動できるような支援の在り方について書面化した。仮設住宅の課題を仮設の人たちで解決するための組織作りを主にサポートしている。
また石巻の場合は社会福祉協議会が「地域福祉コーディネーター」という形で石巻の地域支援を社協が担っていくと宣言されているので、NPOは社協と被らないような「なまちづくり」などの支援を住民と一緒に行っていきたいと考えている。

福田文 氏(一般財団法人 地域創造基金みやぎ)

当団体は地元の団体で、私自身も宮城県の出身。せんだい・みやぎNPOセンターを母体に震災後に立ち上がった財団で、ローズファンドやこどもはぐくみファンドなどで耳にしたことがある方もいるのでは。
いちごっこ馬場さんとの出会いは、当団体がはじめて助成金を公募した2011年9月に、亘理いちごっこを訪問しお話を伺った時。その時は支援に至らなかった。馬場さんはとてもパワフルで様々なアイデアを持っており、当時馬場さん一人とお母さん達とで沢山の事業をまわしていた時期だったので、「馬場さん、まず落ち着こう」というところからはじまった。まずは事務局長を探し負担を減らしたり、事業計画をつくり組織の運営を整えたりしましょう、というアドバイスをしながら2年間共に歩んできた。いまは事務局長もおり、セクションごとにリーダーがおり、様々な人たちに支えられ馬場さんの負担を軽くしくれている。当時から助成金に頼らない組織運営という考えを馬場さんが言っていた。わたしたちも同じ考えだったので、助成金を渡した時点から助成後どう団体運営を維持していくかを考えてきた。今年3月からは、いちごっこ独自で寄付を集めるというプログラムを一緒に行っている。その時に、情報発信をどうしていくか、寄付したい人が欲しい情報とは何かなど、相談にのり話し合いながら共に歩んでいる。
3年目に必要なことは「体質改善」だと思われる。これまでは目の前の活動や助成金を取り続けることで息切れが起こっていると思う。事業は地元の方々に必要とされている部分もあり、外部の団体は撤退という道があるが、地元にいる団体は一緒に生活している市民でもあるので、居なくなることができないことから、継続的な体制づくりが重要だと思っている。とにかく潰れないでほしいと願っているので、継続的に一緒にできることを考えていきたい。

【テーマ3】「深める」

テーマ3では、テーマ1と2の議論を深めるため、【阿部氏+支援Pみやぎチーム】【塚本氏+白鳥氏】【山崎氏+中川氏】【馬場氏+福田氏】の4グループをつくり、参加者も4部屋に分かれて「3年目の支援」について話し合いました

資料等

開催概要

タイトル 3年目の支援を考える
日時 2013年03月21日(木)13:00 - 17:00
会場 石巻専修大学 4号館
(宮城県石巻市南境新水戸1)
プログラム
開会あいさつ
桑原英文 氏(災害ボランティア活動支援プロジェクト会議)
阿部由紀 氏(社会福祉法人 石巻市社会福祉協議会)
【テーマ1】「知る」-被災者・被災地の視点を知る-
[スピーカー]
塚本卓 氏(気仙沼プラス|気仙沼市)
山崎信哉 氏(石巻仮設住宅自治連合推進会|石巻市)
馬場照子 氏(NPO 法人 亘理いちごっこ|亘理町)
【テーマ2】「考える」-必要な支援を共に考える-
[パネリスト]
白鳥孝太 氏(公益社団法人 シャンティ国際ボランティア会)
中川政治 氏(一般社団法人 みらいサポート石巻)
福田文(一般財団法人 地域創造基金みやぎ)
[コーディネーター]
栗田暢之(JCN)
【テーマ3】「深める」
[進行サポート]
NPO法人 日本ファシリテーション協会
主催 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)
共催 みやぎ連携復興センター
災害ボランティア活動支援プロジェクト会議
協力 一般社団法人 みらいサポート石巻
NPO法人日本ファシリテーション協会
NPO 法人 メディアージ
参加者数 111名