中国地方における広域避難者支援の5年目
長期化する避難状況と、変化する広域避難者支援
「中国5県支援ネットワーク会議」にて中国地方を担当しております、「うけいれネットワークほっと岡山」のはっとりいくよです。
私が日々、支援の取り組みの拠点としている「ほっと岡山」では、避難者のみなさんからの相談対応や支援情報の提供、避難者交流会等の開催のほか、避難者支援を中心に支援に取り組む県内11団体のネットワークを支える中間支援的な活動を続けています。避難者支援は生活全般に及び、一人ひとりの人権を守る観点や福祉的な支援が必要な側面、また、長期にわたることから定住支援との関わりも必要とされ、より多層で多くの専門機関・行政窓口との連携とサポートのきめ細やかさが求められています。
そうしたことから、それぞれの団体の多岐にわたる支援が、お互いの取り組みの網の目をできるだけ細かく、柔軟に対応できるよう密につなぎあわせ、土台となるネットワークを安定的に築くことで、広域避難者支援の課題解決となるように目指しています。
遠く離れた西日本という環境で、避難生活を継続している多くの方が感じていらっしゃる困難さは、広域避難者支援を考える際、その状況のわかりにくさから抜け落ちてしまう点がないか、ていねいな考察が求められています。
中国5県会議で取り組むこと
避難元から遠方の地域では、独特の状況と課題がいくつもあります。避難元が多様な避難者の存在、支援の不均衡(避難元による違いや、避難先の独自支援、そして等しく支援情報が当事者に認知されていないなど、その原因もさまざまです)、避難先からの隔たりによる影響、長期にわたる理解の継続の難しさ、現在も原発事故の影響を懸念する移住希望者や再避難先として避難移住希望が続くことなど、これらの状況から派生する課題が多く山積しています。
中国5県会議の今年度の取り組みは、中国地方、そして西日本で多く避難者数を数える岡山の状況を踏まえて、これらの傾向が解決の糸口になればと願い、「情報共有」と「政策提言」に絞り込み、活動を継続することを決定しました。わかりにくい広域避難者支援を、より的確な支援に具現化していくためにしっかりと知ること、長期避難者支援に対応した施策につなげるために当事者の声をまん中において提言していくこと、二つの柱をたててネットワークの力をより活かしていきたいと思っています。
【5月広島県庄原市での役員会議】
6月、「おいでませ山口♪定住支援ネットワーク」設立
これまでも中国地方各県それぞれに、避難者支援の連携が緩やかに図られてきました。今年6月には「おいでませ山口♪定住支援ネットワーク」が山口県に設立、キックオフ総会が多くの参加者と共にもたれました。会の目的は、1. 山口県への移住・定住を希望する者への広報活動と支援を行い、山口県全域の地域活性化をすすめる、2. 中国5県支援ネットワーク会議と連携し、2011年に起きた東日本大震災による津波や福島原発事故による被災者の避難・移住・保養支援を行う、この二つを掲げています。
ネットワークのメンバーからは、「設立に時間がかかってしまった」などの意見があがりましたが、十分に支援状況やニーズを見極めるためには、この地域では必要な時間であったのでは、と設立の経緯や参画団体のみなさんの思いをうかがう中感じました。また、「保養(※)」活動に取り組む団体も多く参加しており、福島県内にお住まいの方からのニーズが引き続きあることや、「保養」の機会が得られにくい発達障がいのあるお子さんの受入れをしてきたスキルがある団体の重要さをあらためて知りました。
※ 「保養」…原発事故による放射性物質の環境汚染から健康被害を懸念し、また健康回復をはかるために、線量等が高い地域を離れ中長期間、生活をすることを指しています。
【6月13日山口市で行われた「おいでませ山口♪定住支援ネットワーク」結成総会&講演】
あらたな支援の枠組みを見極める
避難者の方が安定した生活を送るため、今後どこでどの期間、生活をたて直していくかに関わらず、お一人おひとりがその人らしく生きていくためのサポートが引き続き必要です。今いる場所から避難元へ戻られる場合も含め、安定した生活を送るためのサポートへ少しでもつなげていくことも同時に重要です。
また、従来の自然災害時における長期避難の課題では解決の枠組みを持たない問題もあります。原発事故の影響を健康上懸念している方も多くいらっしゃり、長期化するに連れ、それに対応した支援情報の提供や検診のニーズなどが高くなっている傾向があります。このような変化も十分に把握し、今迄の急性期の支援でかろうじて対応してきたことから、あらたな支援の枠組みをもう一度見直していくことも、広域避難の現場では重要であるとあらためて感じています。
避難者の方のみならず東日本大震災による多くの方の大変な思いその一つひとつが、支援のそばに、支える根源にあることを決して忘れず、現在も、また今後の災害支援にもいかされるよう、中国5県会議、及びほっと岡山の活動を続けていきたいと思います。