東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

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【レポート】「内陸避難者」を支える~震災と生活困窮に寄り添う~

訪問先:一般社団法人SAVE IWATE もりおか復興支援センター
訪問日:2014年7月28日
取材者:中野圭

こんにちは、岩手の中野です!
今回は岩手県盛岡市で活動する一般社団法人SAVE IWATEもりおか復興支援センターの阿部さんにお話をお聞きしました。

―― Q.取り組んでいる地域課題は?

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沿岸部から盛岡に避難されてきた「内陸避難者」の方を支援している。盛岡は被災地ではない。沿岸で被災し住まいを失い、避難されてきた方がわりと目立ち、民生委員さんなどから「ここに避難されてきた方がいるよ」といった情報が入ってきた。周りが内陸避難者に気づいていることが多い。被災された方がいるということに関心をもっている人が多かった印象。コミュニティや関係性が、もともとは全くなかった市内のアパートでも、被災した高齢者が入ってきてそれをきっかけにコミュニティができあがってきたという事例もある。

復興支援センターでは700世帯弱くらいの登録がある。沿岸のように被災者同士が固まっていないので、見守りという意味では難しい。ただこれは被災者に限らず、助けを必要としている人を気にし合い、普段からの気づきが持てるかが課題。内陸避難者は長期にわたり被災地ふるさとから離れている。現地の情報が細かいところまでわからない、あるいは地元を捨ててきたという罪悪感もある。気持ちは戻りたくても通院などの理由で戻れないという状況もある。

そのような状況の中、震災以前から生活に課題を抱え困窮状態だった人が、避難してきて生きづらさや課題を抱えながら生活されていた方々がふるさとを離れたことにより、いっそう困窮しているケースがも多い。盛岡にきた理由も、沿岸でうまくいっていなかったから、盛岡ならうまくいくのではと避難してきたが結局難しい。最初は義援金などがあったが仕事も持てずに困窮している。盛岡などの内陸部に避難してきた理由は様々だが震災から3年半が経った今も義援金などを切り崩して生活し、自立や再建するきっかけすらなく困窮されている方々もいらっしゃる。

―― Q.どのような取り組みをされているのですか?

避難者の状況に応じ見守りや支援方法を検討しの優先度をつけ、戸別訪問やサロンを開催している。サロンに参加している人は見守りしなくても大丈夫な人が多い。見守りが必要かどうか、人に寄り添う支援なので、一人ひとりの状況をみながらの判断となる。高層のマンションに住んでいるケースは、防犯もしっかりしている反面、玄関先に行くこともできない場合がある。そうするとなかなか気づきがうまれにくい。ただ管理人と連携し鍵をあけてもらうしながら見守るなどの工夫はしている。見守りが必要な方々には、やはりなんらかの生活困窮者であり社会的に孤立していたりし生活に困窮されている方もいるが、しかしながらこういった問題は震災以前からの社会課題とも言えるので、被災者かどうかに関わらない支援が今後一層必要となる。

また今後の避難先からふるさとへの帰還支援に関して、沿岸被災地の支援団体を知りたい。そしてそうした団体と連携し、包摂的な困窮者支援ネットワークを持ちたい。困窮者は自分の困っていることを外に伝えられない、手が挙げられない。もりおか復興支援センターが良かったのは、なんでもいいから問い合わせを受け付けることができたという環境があったこと。また、本人から手が挙がるのではなくが手を挙げられなくても、周囲の人から「あそこのあの人困っているみたいですよ」という声が聞こえたこともよかった。

沿岸のどこの地区に帰ったら、どのような支援体制があって、どのような環境の変化があるのかをしっかり把握したい。内陸からの沿岸のつなぎ、戻り方の支援が本当にこれから大事になる。溶け込み支援は、内陸から沿岸に帰る人において一層重要な視点になる。

―― Q.どの様なメンバーで取り組まれているのでしょうか?

センターで15名ほど。うち生活相談が5名。ほかサロン担当や窓口・総務担当等事務等。生活相談を受けるのも、単純な震災特有の課題だけではなくなっており変化も多様でではないので難しくなっている。相談員にも臨機応変に対応できる柔軟性と高いスキルが求められている。

―― Q.困っていることはありますか?

震災の課題は長期的であるが、事業が単年度なので継続性とスタッフのモチベーションを維持していくことが難しい。どれだけ避難者の声を聞き、適切な支援ができるかを考え、中長期的に先を読まなければいけない。簡単ではないが、今回の震災を自分のこととして考えなければいけない。課題は多様化しており、例えば定住を決めた人の支援でも、ニーズが変化・細分化していく。その変化を事前に予測しなければ細やかな支援はできない。そうした体制をしっかり作れるか、が課題である。

―― Q.復興を応援してくれる人達にお願いしたいこと、伝えたいことはありますか?

しっかりとした資金支援は引き続き求めたい。複雑化する課題の中で、相談員の高いスキルを担保するためには、人件費をきちんとかけて人材を確保し育成することが必要。 これからの復興は、もっと広く一般の方が参画しやすい仕組みをつくることが大事。被災地だけでなく、いつ自分の身に起こるかわからない災害として県外の人にも関わってほしい。次はどこで起こるかわからない。日本全国、誰でも、いくらでも考えなければいけないことがある。多くの方々と新しい支援の仕組み作りができればと願っている。

<了>


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2014年9月 9日 16:22