東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)

現地会議

第7回 現地会議 in 岩手

岩手県での7回目の現地会議は、「今を伝え、これからを考える」をテーマに、3年目の被災地岩手の状況を全国に発信すること、および県外から岩手を盛り上げる取り組みを県内に紹介することで、今後の岩手の地域力向上を目的に開催しました。
登壇者の主な発言 資料等 開催概要

登壇者の主な発言

【開会あいさつ】

栗田暢之(JCN)

2年4ヶ月が経過して、ますます風化が進む。JCNの参加団体も860を数えているが、徐々に減少傾向にある。先日800を切った。撤退をせざるを得ないという団体や、被災者支援でなかった団体が本来の活動に戻るなど、マイナスのイメージがつきまとうが、JCNが終わっていいのかといえばそうではない。
むしろ正念場はこれから。高台移転や造成工事が行われている最中で、2、3年は現状維持のまま待たされている状態のなか、これからが次なる支援に向けて何ができるかを考える時期だと思う。
岩手で起こっている問題が宮城や福島で関係ないかといえばそうではない。3県が抱える課題は共通項もある。それらを見出しながら、風化が進むことに「冗談じゃない」としっかりと関係省庁や全国にいる支援したいと思っている方々に伝えていきたい。

佐野淳 氏(岩手県 復興局 生活再建課)

東日本大震災・津波の発災からまもなく2年4か月。亡くなられた方々、行方不明の方々、あわせて6,000人を超えている。また全壊半壊の家屋が約25,000棟という中でいまなお37,000人の方々が応急仮設住宅やみなし仮設住宅に避難されている。
そのような中で被災者の皆様の中には新しい仕事に就いたり、新たに自宅を再建されたり、災害公営住宅への入居が始まっている。本格的な復興はまだ緒についたばかりで長期間に渡る応急仮設住宅などでの生活のなかで、これまで以上にきめ細やかな支援が必要になっている。
被災者支援業務を進めるにあたりNPOの皆さんの柔軟な発想と行動力に助けられている部分も多く、皆さんと連携した取り組みの重要性を常に感じている。

【テーマ1】被災地の今」-今、抱えている課題-

釘子明 氏(陸前高田被災地語り部・くぎこ屋)

被災地で内閣府の起業支援金で起業した。具体的には語り部事業という形で、語り部をしながら防災や安全安心なまちづくりのために活動している。
公園づくり、集会所を歩いていける場所を作っていただきたいと思う。昨日、高田第一中学校に復興大臣政務官が訪れた。住宅再建のために消費税の免除を要望した。陸前高田5,000名の署名を集めてお渡しした。給付金という形で応えたいとコメントがあった。ありがたい。
皆さんには被災地にまず足を運んでいただく、そしてお金を落としていただく、それにより仕事づくりができる。ぜひ一度被災地のほうに足を運んで見ていただけるとありがたい。

瀬浪仁志 氏(公益社団法人 助けあいジャパン)

昨年まで宮古市の狩屋地区の居宅介護支援事業所の愛福祉会で施設長をしていた。いろいろ考えて、その仕事をやめ、今年4月から今の所属になった。発生当時、母の受診付き添いで盛岡にいた。病院の中で地震に逢い、自宅の状況はわからなかった。勤め先のことも心配だった。地震の時は、直接そこにいたわけではないし、その後も親族宅に身を寄せたり、みなし仮設が早く見つかったりして、幸い避難所生活はしなくてすんだ。そういった意味で、負い目があった。
市の土地に関するアンケートによると、土地を買い取ってほしいという希望者が多い。市の想定よりも広い面積の買い取り希望があった。市全体で、4.3ヘクタールの買い取り希望があったが、結果は市が買い取るのは1.7ヘクタールだった。私の自宅の土地は、買い取りしていただけなかった。やはり家を建てようかどうか悩んでいる。災害公営住宅も感性は平成27年を予定、区画整理は28年の3月で完了予定。実際に建てられるのは4年後くらいか。仮設住宅の生活問題など、まだまだ課題は山積みの状態。自宅再建・地域の再建には、まだまだ年月が必要。支援も必要。
居場所づくりはこれからのキーワード。大切になってくると思う。皆さんもさまざまな活動をしていると思うが、居場所づくりに介護保険を使うのもひとつの方向性ではないかと思う。そこに子どもを連れて出勤したり、障がい者を雇用したり、地域の人も寄れる場所を、と思う。

【テーマ2】「支援の今」-沿岸・内陸・行政の視点から-

菊池真吾 氏(NPO法人 さんさんの会)

食事の提供をメインとした団体。制限食というのは、腎炎・人工透析・糖尿の方を対象にした食事。被災当初、何が困ったかというと食材の調達に困った。ライフラインも止まり、炊き出しする時間も足りない。そんな中、お店が津波で流れた店主が始めた活動。その後、いろんな料理を作って提供してきた。
食事を制限されている人がいたので、提供する食事をその方たち向けに改良した。いまは料理相談会・栄養相談会もしている。真空パック(真空低温調理法:パックの中で食材を加工する)でつくっている。仮設・みなし仮設・在宅にお配りしている。それ以外に医療従事者・介護者向けのスキルアップ講座、高齢者にどうやって食べてもらうのかなど高齢者の食事を支える活動をしている。
食事は毎日するもの、健康につながるもの、間違った食事をとることで要介護になることもある。震災の時に制限食が食べれない方がいた。食事指導会を行うと「仮設では死にたくないので、どういう食事をすればいいのか」「糖尿にはどういう食事がよいのか?」など。何を食べるかを教えることで支えになることもある。認知症の方にどう食べてもらうかなど教えることで、家族の支えにもなる。色々なところから相談がある。退職した男性の引きこもりの例とかもくるようになった。
管理栄養士を3名抱えているが、それ以外のスタッフもいるので、どうやって専門知識をつけていくのか、雇用した人をいかに継続雇用していくのかが、組織としての課題。 制限食を必要としているのは、被災地だけではない。高血圧の患者は日本人口の3分の1で約4,000万人。そのうち治療を受けているのは800万人。人工透析や糖尿の方も同じく多くいらっしゃる。災害が起きると必ず制限食に困る人がいる。

船橋和花 氏(認定NPO法人 難民支援協会)

外部支援団体の一例としてお話したい。私たちは海外から日本に逃れている難民の方を支援している。2011年4月から陸前高田市で活動を始めた。活動のゴールを2つと考えていて、ひとつはニーズの減少、もうひとつは私たちが担っていた役割を担える地元の団体が出てくること。
実際には、ボランティア派遣、災害ボランティアセンターの支援など、6つの活動をした。難民の方から「自分も支援活動をしたい」という声があがり、ボランティアとして派遣をした。関わった難民さんは200人超。法的支援・紙芝居・女性支援(地元の外国人女性のかたの介護資格取得支援)など。
外部支援団体の課題は「撤退」と「地元化」。まず地元にとって継続が必要かの確認。それから「地元化」へ。協働相手の力を引き出せるかが大切。特に2年4ヶ月たっているので、地元の団体と一線をひくこともあれば、外部としての力を活かそうとも思う時期。一方で、市民活動と被災住民の距離が遠い。
これからはまちづくりなどが大きなテーマになる。どの方向を住民さんが目指すのかを見ながらどの程度応援できるかが課題になっている。

大桐啓三 氏(いわてゆいっこ花巻)

震災当日はラジオを聞きながら3時間半かけて陸前高田の山際を通って気仙沼へ入った。途中、自衛隊がいたり、東京の消防がいたりして「すごい国だ」と思った。ガソリンを徹夜で入れたりしていたので、1ヶ月はゆいっこ花巻の活動をしていなかった。その後、花巻の温泉に避難者を招待することがあって、それが最初の活動になった。
仮設住宅に行ってモチヅキさんと「モチボラ」をやった。軽トラで高田から大船渡まで走り回って90,000キロにもなった。釜石の唐丹というところでドラム缶で焼きいもをした。そのときの写真があるを、当時の総理がアメリカに持っていったこともあった。
内陸の支援では、物資を取りに来た方のリストを作って重点的に回るようにした。花巻でシシオドリというのがあって供養の舞もした。2年4ヶ月なのでだんだん避難者さんのサークルもできあがっている。一人暮らし、高齢者が多いのでグループをつくって担当を決めてフォローしている。
花巻は沿岸と関東地方の皆さんをつなぐことに全力を尽くしている。失敗もあったが「しょげるな」とみんなに言っている。顔の見える関係づくり。自立したところから、そっといなくなる、とか。どこまで支援できるかは(宮沢)賢治精神で「...ニシニ ツカレタ ハハアレバ」という感じで自立を妨げないようにやっている。

小國晃也 氏(大槌町 復興局 復興推進課 事業推進班)

避難されている住民の懇談会や町の状況をお伝えするなどしている。大槌町には、大槌川と小鎚川の間、4,000世帯があった。被災後、引き波・火災も多く犠牲者も多い。役場職員でも犠牲者がでて、我々はその生き残り。現在仮設に暮らしている。大槌町は犠牲者が1,230人で、現状で3,133人の人口減。
最初は避難所の支援をしていた。そこは神社だった。宮司さんや町内会長さんと一緒にやっていたが、限界を迎えていた時に、花巻温泉へ高齢者などを招待していただいたのには本当に助かった。内陸では説明会をしている。仮設住宅は2,106戸、町内で48箇所、1,000世帯以上が町外に出ている。
復興計画については、最初は町長が不在となり混乱した。私も保健福祉を担当した時期があった。現在、まちづくりの担当に。一昨年度内には、復興計画をつくることを目標に、住民組織をつくって提案していただく形ではじめた。
一番課題に感じているのは災害公営住宅のこと。980戸つくる。高齢化率が高いので自力再建できない高齢者が優先して入ることになっている。6,000世帯中1,000戸が高齢者の住む公営住宅になる。10年20年30年...どうなるのか。空きが出たらどうやって維持管理するのか。全部が稼働できるわけでない。アンケートをしているがその度にご意見が変わってくる。それにあわせて、支援すべき内容も変わってしまう。困っている。住宅の支援という意味で、なんとかして大槌町で自立再建してもらいたい。大槌町でも独自に現金支給もしている。防災集団移転促進事業は、利子補給金がでるとかでないとか。定住促進の施策も考えている。いずれも住宅再建を早くするという施策。

【テーマ3】「岩手でできること」-全国の取り組みをヒントに考える-

多田一彦 氏(NPO法人 遠野まごころネット)

今はなんでも必要で、やればなんでもできるんだという環境を作りたい。震災前からあった課題が凝縮されて現地にあるなと感じている。震災だけでなく、通常の社会のことを見据えていくべきと考えている。日本は人口が減っていく。岩手も人口が減っていく。なんでも行政のせいにせずに、民間にも行政感覚が必要で、パートナーシップをもって一緒に行政をつくっていくことが大事。地域や社会が共同して経営していくみたいな。生存のために協調していく、具現化する、アクションする。
まごころネットの活動テーマ今年は「融合」。いろんなものが融合して倍以上の力を発揮する。日本の社会では経済でもどんどん下がっていく、人口も減っていく、労働者・経営者でなく共同経営者の形に、企業と同業他社、職人とIT企業、自分の生存だけを考えているとバランスが崩れてしまう。プロボノとかCSRとかも覚悟をしてやっていくことが大事。継続させていく事が大事。一方でプロボノやCSRというのは間をつなぐのに重要な役割を果たす。企業も個人も共同して地域づくりをするにあたって、プロボノの役割は大きい。

吉野和也 氏(NPO法人 テラ・ルネッサンス)

2011年4月までウェブの仕事をしていた。それから大槌に入って刺し子プロジェクトに関わった。復興刺し子プロジェクトは売上3,000万円を超え、いま127名がかかわっている。伝統工芸のない場所でこういうのは初めてのモデル。大槌ブランドを作りたい。
企業との連携として、良品計画と連携し無印良品で販売している。その他、Googleと連携していて、現地事業者の方にウェブの作り方を教えている。情報共有会を支援団体を集まめて月2回開催している。プロボノの事例としては、プロボノの方に頼りきり。無償でやってもらっている。
カタログデザインなどもそう、商品企画や価格設定、流通、商品写真撮影...プロがボランティアで関わっている。コラボ商品は工数がかかる。常時10案件ぐらい動いている。ツイッターやフェイスブックの更新もプロボノが、東京での販売もプロボノが。イベントの企画もしている。「大槌かもめの贈り物」というのを東京神保町で喫茶店とコラボして開催。ポスターや告知、メニューを全部彼らがやった。あとジロックフェスティバルやAPバンクフェスでの出店の段取りもプロボノが。現地では生産管理のアドバイス(売上と見通し販売戦略)もプロボノがしている。
なぜこのような協力体制ができたかというと、立ち上げの段階からかかわっているので、自分たちがオーナーシップを持って事業をしているから。ポイントは具体的に何に困っているか発信すること。力を貸す理由や共感がそのプロジェクトにあるかどうか。被災地ではたくさんのかたの協力が必要だと思う。

本多智訓 氏(一般社団法人 MAKOTO)

MAKOTOでは、東北の起業家、挑戦者のインキュベーターとしてコンサルティングや投資、プロボノの募集をしている。また、クラウドインキュベーション「チャレンジスター」を運営している。クラウドファンディングはお金を集めるだけでなく、掲載団体の困っていることも集めようというのが特徴。2012年12月にスタート、12プロジェクト。7社目標達成。
困りごと支援。例えば石巻でリハビリセンターを建てたいという話があって、土地を貸してほしい、福祉用具の協賛がほしい、人材が欲しいなどのうち、用具と土地が決まったりとか。他のクラウドファンディングサイトは、お金が集まったら終わりだが、チャレンジスターはその後の情報発信もしていく。最初はウェブだけだと伝わらないと思い、リアルイベントを企画していた。プレゼン大会をしていた。 調査結果。ひとり1万円くらいは支援をしている。

伊藤英 氏(一般社団法人 SAVE TAKATA)

「復幸マップ」を作っていて、そのファンドレイジングについてお話したい。
震災後にバラバラにお店がオープンしたが、地元の方もわからなかった。その頃、神奈川から入った金太郎ハウスのかたがかいた手書きのマップが好評だった。それを引き継いでリニューアルした。A4で16枚、最新版は今月中に発行される。今後、陸前高田のみんなが知っているように認知度を上げる。広告収入。アプリでの展開。まずは地元で認知度をあげることを地道にやる。

資料等

開催概要

タイトル 今を伝え、これからを考える
日時 2013年07月09日(火)13:30 - 17:00
会場 あえりあ遠野 2階「さくら」
(岩手県遠野市新町1-10)
プログラム
【テーマ1】「被災地の今」-今、抱えている課題-
[スピーカー]
釘子明 氏(陸前高田被災地語り部・くぎこ屋)
瀬浪仁志 氏(公益社団法人 助けあいジャパン)
【テーマ2】「支援の今」-沿岸・内陸・行政の視点から-
[パネリスト]
菊池真吾 氏(NPO法人 さんさんの会)
船橋和花 氏(認定NPO法人 難民支援協会)
大桐啓三 氏(いわてゆいっこ花巻)
小國晃也 氏(大槌町 復興局 復興推進課 事業推進班)
[コーディネーター]
田尻佳史(JCN代表世話人)
【テーマ3】「岩手でできること」-全国の取り組みをヒントに考える-
[パネリスト]
多田一彦 氏(NPO法人 遠野まごころネット)
吉野和也 氏(NPO法人 テラ・ルネッサンス)
本多智訓 氏(一般社団法人 MAKOTO)
伊藤英 氏(一般社団法人 SAVE TAKATA)
[コーディネーター]
田尻佳史(JCN)
主催 東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)
共催 NPO法人 いわて連携復興センター
災害ボランティア活動支援プロジェクト会議
協力 NPO法人 メディアージ
参加者数 132名